ライフ

鎌田實医師 気負いのない自由な発想が「老い」を面白くする

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 現在73歳の諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、著作『がんばらない』で病や死との向き合い方を提示したのは60代になったばかりだった。それから約十年、みずからの「老い」に直面することで分かってきた、面白く生きる技術について語る。

 * * *
 夜中に何度もトイレに起きるようになった、皮膚が乾燥し、かゆみでよく眠れない、人の名前がのど元にひっかかって出てこない……。そんな出来事で「老い」を感じ始める人も多いだろう。

 作家・森村誠一氏は『老いる意味』(中公新書ラクレ)のなかで、50歳ごろ、眉毛が伸びてきてショックを受けたと述べている。

 老いとの出合いは、不意打ちである。そして、さまざまな衰えが波状攻撃のように襲ってくる。「老いるショック」である。

 精神科医のキューブラー・ロスは、死を受容するまでに5段階の心の変容があると述べている。まず「否認」し、次に、どうして自分が?と「怒り」を感じる。やがて死から逃れるために何かにすがろうと「取引」するが、やはり死から逃れることはできないと「うつ状態」になり、最後に「受容」に至る。

「老い」のショックは、「死」のショックほど大きくはないかもしれない。けれど、次々と老いの事象が起こるたびに、死の受容5段階と同じような過程をたどるのではないだろうか。そして、この過程を行きつ戻りつしながら、老いを受け入れていく。

「自由になれる」これこそ、老いのキモ

 老いを受け入れることは、敗北を認めるような、さびしさがある。40、50代のころはそんなふうに思っていた。しかし、最近はちょっと違う受け止め方をしている。老いを生きることは、自由になっていくことだと気づいたのだ。

 ぼくは団塊の世代。若いころは、「男はこうあらねばならぬ」という刷り込みが強く、「モーレツにがんばって成功を手に入れる」という根性論が支配していた。そんな空気に反発しようとしてきたつもりだが、知らないうちに染まっている部分もあった。

 そんな社会や自分自身が作った縛りから、「老い」は解放してくれる。仕事を退職し、子育ても終わった。ようやく身軽になって、やりたいことがやれる時が来たのである。

 サマセット・モームいわく「老年の最大の報酬は、精神の自由だ」。まさに、これが老いのキモだと思う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

スタッフの対応に批判が殺到する事態に(Xより)
《“シュシュ女”ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に》K-POPフェスで韓流ファンの怒りをかった女性スタッフに同情の声…運営会社は「勤務態度に不適切な点があった」
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(時事通信社/読者提供)
《動機は教育虐待》「3階建ての立派な豪邸にアパート経営も…」戸田佳孝容疑者(43)の“裕福な家庭環境”【東大前駅・無差別切りつけ】
NEWSポストセブン
未成年の少女を誘拐したうえ、わいせつな行為に及んだとして、無職・高橋光夢容疑者(22)らが逮捕(知人提供/時事通信フォト)
《10代前半少女に不同意わいせつ》「薬漬けで吐血して…」「女装してパキッてた」“トー横のパンダ”高橋光夢容疑者(22)の“危ない素顔”
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン