ペナントレース終盤、優勝争いをしているチームとの一戦で引退試合を開催する是非は――。日本ハムの斎藤佑樹が今季限りでの引退を発表した。栗山英樹監督は、10月17日日曜のオリックス戦(札幌ドーム)で斎藤がサヨナラ登板をすると明言。試合後にはセレモニーも行なわれる予定となっている。
2006年夏の甲子園で駒大苫小牧の田中将大(現・楽天)と投げ合い、決勝引き分け再試合の激闘を演じた早稲田実業のエースは早稲田大学に進学し、2010年秋のドラフト会議で4球団競合の末、抽選で交渉権を獲得した日本ハムに入団。1年目は6勝、2年目は開幕投手を務めてプロ初完投勝利を飾った。しかし、その後は故障に見舞われ、期待されたような成績は残せず、11年間で通算15勝26敗(10月6日現在)に終わった。
プロ野球担当記者が話す。
「斎藤佑樹はプロでは活躍できませんでしたが、甲子園で伝説を作ったし、普段野球を見ない人への知名度も高い。昔は超一流選手しか引退試合を行なえませんでしたけど、最近はさほど成績を残していない選手でも開催される。人気や昨今の風潮を考えれば、引退試合を開催するのは自然な流れかもしれません。しかし、優勝を争っているオリックス戦を選んだ球団には疑問がありますね」(以下同)
現在のところ、日本ハムのホーム最終戦は10月26日火曜の西武戦(札幌ドーム)になっているが、どうしてオリックス戦になったのか。
「今の時点で西武は自力でのクライマックスシリーズ進出の可能性が消滅していますし、おそらく10月26日はいわゆる消化試合になる。シーズン中に引退試合をしたいなら、本来はその日にするべき。しかし、球団は観客の入りを考えて、平日ではなく休日に行ないたいのではないでしょうか。企業としては当然の判断ですし、コロナ禍で観客動員が大幅に減っていることを考えれば、無理もないのかもしれません」
人気のある斎藤佑樹の引退試合を日曜にすれば、観客数が伸びると同時に関連グッズの売り上げも変わってくる。
「昔の引退試合は主に翌年のオープン戦でしたが、1990年代中頃からはシーズン終盤の開催が増えた。引退記念グッズの売り上げが球団の経営に大きく貢献すると分かったからでしょう。企業がチームを持つ場合、以前は親会社の広告費として計上していたので、どんぶり勘定な部分も多かった。しかし、最近は単体として黒字を出そうと、どの球団も努力をしています。その1つが実績を残した選手だけに限らない引退試合の開催です。優勝がなくなったチームにとってもファンにとっても、魅力のある興行に変わりますから」