鬼才・竹中直人が女優の鈴木砂羽を撮影した。書き下ろしファンタジー『沙夜』と共に、グラビアをお届けする。
* * *
普段と目つきが違う
普段と息遣いが違う
どこを見ているのか分からない
何を見つめているのかさえ不確か……
「今はそうよ」
どこへ行こうとしてる?目的は?未来は?
「やめて……」
ため息まじりに言う
わざと聞こえないふりをする
誰がそうさせた?
君? おれ?
誰でもない何か?
「太陽が眩しかったから……」
ふぅ~ん……
どこかで聞いたセリフ
好きな映画は
アントニオーニ……
太陽が眩しかったから
はヴィスコンティ「異邦人」
「誤魔化さないで……」
あなたはいつも逃げる
わたしの何が分かるの
「ねぇ……」
ノイズにしか聞こえない
沙夜……
誰がつけたんだその名前
おやじか?
どんな父親に育てられたんだ?
あなたは何にも分かってない
「それはお互い様だろ!」
おれの何がお前に分かる?
分からないわよ
「あなたのことなんて……」
あなたは……すぐに逃げる男だってこと
だけは分かるわ
大したもんだな
「タバコちょうだい」
あ……
「火」