優勝への一縷の望みをかけた首位・ヤクルトとの3連戦で3連敗。残り12試合で8.5ゲーム差を付けられた巨人の3連覇がほぼ絶望的となった。前半戦が終わった時点で、首位・阪神を3位・ヤクルトが2.5ゲーム差、2位・巨人が2ゲーム差で追う三つ巴の展開になった時、巨人が最初に脱落すると予想できただろうか。
後半戦が始まると、巨人は中日に同一カード3連勝と最高のスタートを切る。続く松山でのヤクルトとの2連戦は初戦こそ大敗したものの、2戦目はベテラン中島宏之の決勝タイムリーで競り勝った。原辰徳監督が掲げた『わっしょいベースボール』のキャッチフレーズとともに、上昇気流に乗るかと思われた。
その矢先の8月20日、球界に激震が走る。チームメイトへの暴行で、わずか9日前に無期限出場停止処分を下されていた日本ハムの中田翔が巨人へ無償トレードされたのだ。プロ野球担当記者が話す。
「日本ハムの栗山英樹監督と原監督の間で話が決まり、原監督はLINEでキャプテンの坂本勇人に伝えただけと言われています。この移籍がチームに与える影響を少なく見積りすぎていたのではないか。現役時代、晩年に落合博満や広沢克己やジャック・ハウエルが加入してきて、自分のポジションが浸食されていった時の感情、チーム内に微妙な空気が流れたことを忘れてしまっていたように思います。
昨年のパ・リーグ打点王が特殊な事情で急に入ってくれば、選手は動揺するでしょう。ポジションや一軍枠が1つ減るし、選手たちはどう接すればいいのかも戸惑うはず。それなのに、詳しい説明はない。原監督は自分が決断すれば、選手たちは黙ってついてくると思っていたのかもしれません。たしかに監督通算1000勝を挙げていますし、一昨年、昨年の連覇は原監督の手腕に依る部分も大きかった。今年の前半、主力を欠く中で、選手を適材適所に起用していき、成績を保った采配も見事でした。しかし、それらの成功体験があったからこそ、逆に落とし穴にハマってしまった印象です」(以下同)
中田翔の移籍で影に隠れているが、7月4日に炭谷銀仁朗を金銭トレードで楽天に放出したことも痛かったのではないか。
「原監督は選手の“飼い殺し”を嫌い、一昨年に3次政権が始まってから、活発にトレードを敢行しています。ベテラン炭谷の残り少ない野球人生を考えた時、大城卓三や小林誠司などが揃っている巨人よりも、捕手に悩む楽天のほうが多く出場できる。本人の希望を叶えてあげたのでしょう。
しかし、この決断は2年前に西武からFAで獲得した時の理由に背くものだったのではないか。レギュラー捕手に刺激を与える存在として、岸田行倫を起用することもあるが、たしかにこの2年で岸田は成長しているが、炭谷の域にはまだ及ばない。他にも今年、大城が一塁に入って、炭谷がマスクを被って勝った試合もあった。炭谷は試合に出ていなくても、同じ捕手の手本としての影響力は大きかった。後半戦、失速している時に経験値の高い炭谷がいれば……と思う場面は何度もありました。7月の時点で、原監督は炭谷の穴は小林誠司で埋められると思ったのかもしれません」