日本では新型コロナウイルス感染症の新規感染者数の減少に伴い、9月30日に各地に出されていた緊急事態宣言が解除された。一方の韓国では、ソウルとその首都圏地域を中心に感染者が多く国内全体の感染者数の増加を押し上げている状況である。が、1年半以上の長期に亘り続く数々の制限に疲弊と限界を訴える声も多い。韓国在住のライター・田中美蘭氏が、大々的な制限がない「ウィズコロナ」生活を「ワクチン接種ありき」で目指す韓国社会の動向についてレポートする。
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韓国の中央防疫対策本部が発表した、10月7日現在では、新規感染者数2427人。前日よりも399人増えここ一週間で最多を記録。そのうち市中感染者2414人を地域別にみると、ソウル市が835人、京畿道が856人、仁川市が200人と首都圏で8割近くを占めている。このように感染拡大がソウルを中心に続く中でも、それ以外の地域では新型コロナとの共存を見越したかのような動きが加速している。
まず、9月中旬より、小学校から大学までの全面的な登校が1年半ぶりに再開された。オンライン化が進んでいる韓国では、2020年の初期の感染拡大時よりオンライン授業の体勢を整え、学年を分けて登校とオンライン授業を隔週で行うといった措置を続けてきた。同時期に起きた日本での学校休校の際の混乱時には、韓国のオンライン授業を称賛する声も上がっていたほどだ。しかし、オンライン授業が長期化するにつれて聞こえてきたのは、子どもたちの「学力低下」や「無気力」、「学校嫌い」といったマイナス面であった。
さらに今年6月に、日本の学力テストに相当する中学3年生と高校2年生を対象に行われる「学業成就度評価」に於いて、基礎学力の水準に到達していない生徒の比率が過去最大を記録したという結果が発表され、衝撃が広がった。
こうしたことから、「これ以上、学校で学ぶ機会を減らしてはならない」という危機感を募らせ、全面登校の再開に踏み切ったものと思われる。
オンラインによる授業も学習動画を多様に活用したり、さらに教師が児童・生徒とをつなぎZoom(ズーム)での授業を行うなど教育現場の努力も見られたのは確かである。だが、一年半という長期に及ぶオンライン授業は結果的にメリットよりもデメリットが上回り、「学校に行き直接授業を受けることに勝るものはない」ということを認識させられたと言える。
若い世代はワクチンに懐疑・消極的
また、韓国政府はワクチン接種の1回目接種率70%旧盆の秋夕(チュソク)連休(2021年度は9月18日~22日)を前に達成させる目標を掲げていた。そのため、連休後に接種を控えている予定者に対し「残余ワクチン(急に予約キャンセルされたワクチン)を利用して予定よりも早く接種を受けることができる」というアナウンスを、あらかじめ登録している人の携帯メールで送信する「残余ワクチンシステム」を活用するなど、積極的な呼びかけを行っていた。結果、10月3日現在、ワクチンの接種率は1回目接種済で77.3%、2回目の接種済は52.5%で目標を達成した形だ。
接種率をさらに上げる呼びかけをしているものの、ここに来て若い世代のワクチン接種率が伸び悩んでいるという現状も明らかになっている。特に、20~30代の接種が低調を極め、「接種をしない」、「今は見送る」といった消極的な声が多くなっているのである。