低年式車も魅力的/バレーノ(スズキ)
日本の乗用車マーケットにとって初のインド車として2016年に販売が開始されたスズキ「バレーノ」。インドを起点とするグローバル展開へのトライの一環であったが、販売は最初から低迷。年間6000台(月間500台)という控えめな目標を一度もクリアできないまま昨年終売となった。
売れなかった理由としてよく挙げられるのはインド車であることが忌避されたということだが、筆者がバレーノで長距離ドライブを試みてみた経験では、インド製であることのデメリットはほとんど感じられなかった。
シートの縫い目がちょっと曲がっていたりという部分はあったが、それも全体ではなくごく一部で、観察しなければ見過ごすレベル。走行中のきしみ音、ビビり音もなかった。品質面よりはデザインの好みがインド市場と日本市場で違いすぎたのが売れなかった主因ではないかというのが率直な印象である。
ほとんど売れないまま消えたバレーノだが、光るモノは持っている。それはただのファミリーカーという外観とおよそミスマッチな速さだ。
車両重量が900kg台と非常に軽いうえ、車幅が3ナンバーであるためトレッド(左右輪の間隔)が広く、コーナリングでの安定性と敏捷性はおいおい本当かよと思うくらいに高かった。セールスが不振だったわりにはアフターパーツ、とりわけ足まわりの強化部品が多く発売されている。その資質を見抜いたユーザーが峠マシンなどにしているのだろう。
パワートレインは1.2リットル直4自然吸気+CVT、1リットル直3ターボ+6速ATの2種類があるが、走りを楽しむなら断然後者だ。ステアリングにパドルシフトが装備されていて自在にシフトチェンジできるのだが、その変速レスポンスが実に素早い。
また111psエンジンは軽い車重には十分すぎるくらいの能力で、実に気持ちよくびゅんびゅん走った。アイドリングストップ機構は持たないが燃費も良く、長距離ドライブではリッター20kmは余裕でクリアした。
中古市場ではすでに100万円アンダーの個体が多くなってきているが、特に狙い目なのは改良が入る2018年4月より前のモデル。後期モデルは燃料がレギュラーに変わったが、パワーも102psにダウンしている。今日のガソリンの価格水準だとレギュラーとプレミアムの燃料代の差はせいぜい7%。フルパワーを楽しめ、お値段もより安い低年式が魅力的と言える。