2020年から続く新型コロナウイルス対策によって、世界中の経済が大きな影響を受けている。日本も例外ではなく、かつては忌避された資本金を減らす行為、減資へ踏みだし大企業が中小企業となる選択を選ぶケースも増えてきた。鉄道会社にも同様の事例が生まれているが、新型コロナの影響はもちろん、長年の経営体質改善も目的とされているようだ。ライターの小川裕夫氏が、鉄道会社の減資に特有の事情をレポートする。
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10月1日、緊急事態宣言が全面的に解除された。これにより、都道府県をまたぐ移動や飲食店などの営業規制が緩和される。
昨春からつづく新型コロナウイルスの感染拡大は、日本経済に大打撃を与えた。2020年以降、コロナ禍で資本金を1億円以下へと減資した企業が続出。有名企業でも、賃貸アパート事業を手がけるレオパレス21、かっぱ寿司でお馴染みのカッパ・クリエイト、格安航空料金で業績を拡大したスカイマーク、全国紙の毎日新聞社、スマホゲームのグリー、大手旅行代理店のJTBなどが資本金を1億円へと減資している。
事業規模に合わせ減資した北九州モノレール
資本金が1億円以下の企業は、法人税法において中小企業として扱われる。中小企業になると、法人税や法人事業税などの税負担が軽減されるといった優遇措置がある。
福岡県北九州市の小倉駅-企救丘(きくがおか)駅間を約8.8キロメートルで結ぶ北九州モノレールは、2020年度に年間利用客が約350万人も減少した。これは観光客だけではなく通勤・通学利用者も含めた数字だが、減少した理由はテレワークなどの在宅ワークが進んだことや都心部への買い物・外出の自粛といったコロナの影響をもろに受けた形だった。
利用客が減少すれば、経営にも大きな影を落とす。北九州モノレールは経営状況を改善するために車両や土地、社屋といった保有する固定資産の帳簿上の価値を引き下げる減損処理を実施。同時に、資本金を30億円から1億円へと減資している。
「今回の減資は、昨年から検討していたものです。北九州モノレールは北九州市が100パーセント出資する第3セクターの鉄道ですが、市内全域をカバーしている路線ではありません。そうしたことも踏まえて、事業規模に合わせる目的で減資をしました」と事情を説明するのは北九州モノレールを運行する北九州高速鉄道の担当者だ。
北九州高速鉄道の担当者は「1億円への減資は、税負担の軽減を目的にしたものではない」と強調した。