1990年代に女子高生たちの間で爆発的に流行ったルーズソックスが今再びブームになっていると話題だが、巷で見かける「昭和レトロブーム」は他にもたくさんある。世代を問わず、昭和の匂いが蘇る商品やサービスが受け入れられている理由は何か。また、レトロブームの“仕掛け人”たちは消費者のどんな反応を狙っているのか。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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「昭和レトロブーム」が続いている。昭和時代を知らない、特に25歳以下のZ世代にそのアナログさが新鮮に映るようだ。若い人たちが、グッときて心を揺さぶられた時に発する「エモい」という言葉も、昭和レトロなモノやコトに接した際のSNSなどでよく見かける。
昭和レトロな代表商品の1つが、レンズ付きフィルムの使い捨てカメラ、「写ルンです」(富士フイルム)だ。「写ルンです」が発売されたのは1986年のことで、最盛期の1997年には年間約9000万本が売れた。
だが、その後デジカメの普及や、スマホのカメラ性能も年々高まっていったのと反比例して「写ルンです」の販売は減少の一途を辿り、2012年には430万本まで激減している。しかし、2015年あたりを境に再び息を吹き返してきた。若い女性を中心に購買が再拡大しているためだ。
「ダサいけど温かみがある」
「写ルンです」には「失敗しても撮り直しのきかない特別感」や「フィルム独特のアナログな味わいや風合い」「現像に出してみないとどんな写真の出来なのかわからないドキドキ感」など、デジカメやスマホとは違った面白さがあり、使い分けをして楽しむ人も多いようだ。
このほか昭和時代の歌謡曲やそのカヴァー曲も人気で、敢えてアナログレコードやカセットレコーダーで音楽を聴く人も増えており、純喫茶でクリームソーダを食して昭和感を感じ、ほのぼのまったりする若い女性も少なくない。
若年層から「昭和時代のモノはダサいけど温かみがある」といった声も聞かれ、デジタルなら何事も早く済んで便利だが、スローで不便なアナログも、どこか自分に寄り添ってくれる、あるいは包んでくれるような温もりを感じるのかもしれない。
加えて、1年半以上に及ぶコロナ禍でテレワークが普及し、オンライン会議が一気に増えたことで公私ともに対面機会が減り、孤立感を覚える人も増えた。そうした精神的疲労を癒してくれるものの1つが、昭和レトロなモノやコトといえるだろうか。