長らく続くコロナ禍でスマホの利用時間が増加している。MMD研究所の調べによると、緊急事態宣言下でのスマホの利用時間は全体的に増加傾向にあり、最も増加率が高かったのは、なんと「7時間以上」の群。宣言前と比べて34%も増えており、その多くがSNSを利用している。
SNSで見知らぬ人と出会い、人生が豊かになった人がいる一方で、SNS上で広がる「見えない人間関係」は、「見ず知らずの人からひどいコメントがきた」「マウント合戦に巻き込まれた」「いいねがもらえずに落ち込んだ」などの問題を生む。
スマホ依存防止学会代表の磯村毅さんによれば、リアルな人間関係は、増えれば増えるほど幸福度が上がる、という。しかしその一方で、SNSは、接する時間が増えるほど幸福度が下がることがわかっている。
精神科医のアンデシュ・ハンセン氏は、著書の『スマホ脳』で《私たちは1日2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っている》《スマホは私たちの最新のドラッグである》と訴えた。同氏の母国・スウェーデンでは、現実に危機を迎えている。おくむらメモリークリニックの奥村歩さんはいう。
「同国では近年、10代の女性が抗うつ剤を服用する比率が増えています。うつ病になるのは1日5時間以上スマホを利用する患者が圧倒的に多く、ほとんどがSNSを見ていたそうです」(奥村さん)
心を病むほどのめり込んでしまうのは、SNS特有の「いいね!」という評価による。たったワンクリックの評価が、人から認められたい、ほめられたいという「承認欲求」を絶妙にくすぐるのだという。
「古くから、人間は食べ物とうわさ話で生きてきました。“誰が敵で、誰が味方か”を判断するのは、人間の習性なのです。人からよく思われたいという承認欲求は、人間が生きるために不可欠なもの。いいねを求めること自体は、自然な行為です」(磯村さん)
ただし問題は、その承認欲求をネット上で満たそうとしていること。世界中の人が気軽に「いいね!」と反応できるため、承認欲求は簡単に満たされ、脳はそれに依存するようになる。脳科学者の杉浦理砂さんはいう。
「SNSでいいねをもらうと、ドーパミンが分泌されて、強い快楽を得ます。そもそもSNSは、脳科学の知見に基づいて、わざと依存が生じやすいように設計されている。『いいね!』機能の開発者自ら、SNSの依存性を“ヘロインに匹敵する”と語っているほどです」(杉浦さん)