健康のために飲んでいた薬が、飲み合わせによっては“死を招く”リスクになる。“世間の目”を気にして服用を隠したくなる一面があるという意味では、勃起不全(ED)治療薬も注意が必要だ。
70代男性(別掲図参照)は、ED治療薬のPDE5阻害薬(シルデナフィルクエン酸塩)を希望して受診し、処方箋をもらって薬局を訪れた。ところが、薬局で併用禁忌の狭心症治療薬(ニコランジル)を服用中と確認され、医師に問い合わせ後、ED治療薬の処方が削除された。
内科医の谷本哲也氏(ナビタスクリニック川崎)が指摘する。
「いわゆるバイアグラですが、血流をよくして勃起させるED治療薬と、血管を広げるニコランジルを併用すると、血圧が下がりすぎて心筋梗塞など心臓血管系のトラブルが起こる可能性があります。
泌尿器科で勃起不全の薬をもらっていても、内科などでそれを言わないケースも考えられます。言うのが恥ずかしかったり、治療している印象が薄く『言う必要がない』と思ったりするのかもしれません。
海外から個人輸入していたり、窓口でおくすり手帳の確認が不十分のまま薬を買ったりする場合もチェックが漏れがちでしょう。いずれも、危険性を孕んでいます」
実際に“ヒヤリ”では済まなかった事例も過去に報告されている。ED薬を使用して死亡した例があった。
高血圧、糖尿病、不整脈の持病があった60代の男性は友人から貰ったバイアグラを1錠服用後、性行為をしたが、服用から約3時間半後に死亡した。男性は、不整脈の治療で、併用禁忌であるニトログリセリン貼付剤を使用していたという。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号