SNSに不適切な発言や投稿をして批判が殺到、炎上する事件は今も起きているが、なかでもアルバイトによるそれらの行為が頻発したのは2013年の夏だった。あれ以来、若者は全体的にSNS投稿に慎重になり、複数のアカウントや裏アカウントを使用することでバランスのとれた運用をこころがけてきた。しかし一方で、平穏にSNSライフを楽しんでいるつもりが、就職活動などではプライバシーや自由意志に踏み込んだ働きかけに利用されることもあるらしい。ライターの森鷹久氏が、専門業者に頼らずに実行されている、企業の採用におけるSNS活用についてレポートする。
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企業が新入社員の採用をする際に、外部業者などを使い、志願者のSNSをチェックして裏アカまで特定している、という新聞報道が話題になっている。もっとも、こうした話は何年も前から「噂」としては存在したが、当該事業者への取材に成功したこともあり、大々的に報じられたのは初めてのことだ。この報道は、特別な一部の企業に限った話ではなく、一般的なことになっているのだろうか。都内の大手人材会社の人事部に所属する中本遥香さん(仮名・40代)は、筆者の問いにあっけらかんと答える。
「うちの会社でも、外部の業者さんに新入社員のネガティブチェックをお願いするのですが、そこにSNSチェックが加わったのはこの数年のことです。AIを使って、新入希望の学生のアカウントを特定できる、なんて営業をしてくる業者もいて、便利だとは思うのですが、自分がやられたら嫌だな、と正直思います」(中本さん)
採用ツールにもなっているSNSから分かること
事前に対象の否定的な事柄をチェックするネガティブチェック、という言葉を使うと最近の傾向のように思うかもしれない。しかし実際には、ネットが今日ほど発達する前から、新入社員に対する事前チェックは、大企業などを中心に平然と行われてきた。家柄はしっかりしているのか、本人や家族含め前歴や逮捕歴、前科があるか、などである。警備会社や金融機関などは、今でも犯歴や借金がある人間を採用しない、と言われているが、その裏にはこうした「事前チェック」が存在しているのだ。かつてそれは、関係各所からさまざまな書類を寄せ集めるなどの極めてアナログな作業だったのが、最近はネット、特にSNSでのチェックが欠かせなくなっている。
これらの事前チェックを請け負う専門の事業者もいるが、業者にリサーチを依頼する、というのは、まだ少ないのが実情のようだ。大部分の事前チェックは、人事部の担当者らによって行われているという。
「エントリーシートの情報を見て、フルネーム、姓や名前、居住地や学校などキーワードを組み合わせてネット検索します。一発でSNSがヒットすると黄色信号で、そこにベラベラとプライベートが書き込まれているのはアウト。よほど優秀な学生さんでない限り、それで『お祈り』ですね」(中本さん)
SNSでは「#日常ログ」「#vlog」などの投稿が人気だが、就活生がその流行にのってしまうと「今後のご健闘をお祈り申し上げます」と不採用通知を受け取ることになる可能性が高いようだ。