スランプを脱した“スマイル・シンデレラ”の破顔――その瞬間を地上波テレビで見られる視聴者はいなかった。スタンレー・レディース(10月10日最終日)で1年11か月ぶりの復活優勝を果たした渋野日向子だが、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)はこの大会から有料ネット配信を始めたからだ。
大会直前、JLPGAは米メディア大手ディスカバリー社が運営するインターネット動画配信サービス「GOLFTV」でスタンレー・レディスの3日間すべてをライブ配信すると発表した。スポーツ紙デスクはこう話す。
「月額1000円の料金を払って『GOLFTV』に加入すれば、午前10時から試合終了まで生中継で観ることができるというものです。プロ野球やJリーグと違って、女子ゴルフは主催者が放映権を持っているが、その主催者は放映権料を発生させないでスポンサー集めも含めたゴルフ中継をテレビ局に丸投げしてきました。地上波で中継されてもJLPGAに放映権料が入りません。JLPGA側はそのことに不満を持ち、テレビ局や系列局が主催者となっている一部の大会を巡っては放映権の一括管理を求めてテレビ局側と対立してきた経緯があるのです。テレビ局としては、女子ゴルフが不人気だった時代にも予算を組んで広告スポンサーを集め、地上波で中継して支えてきたという思いがあるから、JLPGA側の主張に簡単には応じられないでしょう」
現在、国内女子ゴルフツアーはスポンサー企業がJLPGAに公認料を支払って主催者となっている。それを2025年シーズンからJLPGAは、ほぼすべての大会で自身が主催者となることを目指していると報じられた。これも放映権の一括管理、インターネット中継による収益基盤の安定を視野に入れての話だとみられている。ツアー関係者はこう言う。
「これまで主催者としてやってきたスポンサー企業としても、簡単に首をタテに振れる話ではないでしょう。スポンサー企業は公認料に加えて大会賞金や運営費などを負担し、総額は3億~4億円ともいわれてきた。JLPGAが主催者になると、協賛金として同様の負担をしながら特別協賛という立場になるといったかたちが考えられ、独自カラーを出しにくくなるとみられている。そのことに反発するスポンサー関係者も少なくありません」