岸田新内閣が発足したものの、閣僚人事の人選などから「3Aの傀儡政権だ」「安倍のいない安倍内閣」などと揶揄されている。そんななか、岸田内閣の「影の総理」と呼ばれ始めたのが甘利明・自民党幹事長だ。これまでキングメーカーの安倍晋三・元首相と麻生太郎・副総裁に忠実に付き従う「3Aトリオの末席」と見られていたが、総裁選と新政権の人事で一気に権力の中枢に駆け上がった。
「幸せを実感できるような挑戦をすれば豊かになれるという設計図を示していく」
新内閣発足前日、NHKの『日曜討論』で甘利氏が語った言葉はまるで首相の抱負のようだった。
その権力掌握の手法は、政敵を容赦なく追い落としていくやり方だ。まず標的にしたのが麻生派の後継者の座を争うライバルの河野太郎氏。総裁選では菅義偉・前首相の不出馬表明で河野氏が出馬に動くや、甘利氏は「菅総理がダメだと叩かれた一番の原因がワクチンの迷走と言われているのに、ワクチン担当大臣の評価が上がるとはよく分からない」と批判して岸田選対の最高幹部に収まると、河野票を切り崩して岸田勝利の立役者となった。
そして論功行賞で幹事長に就任すると、敗れた河野氏を大臣から党広報本部長へと“降格”させる報復人事を行ない、同じ神奈川県勢の菅―河野―小泉進次郎連合を政権中枢から完全に追い払った。
だが、党内を驚かせたのはその先の人事だ。政敵を追い払った甘利氏は、次に、“もう用済み”とばかりに自分の後ろ盾だった麻生氏と安倍氏の影響力排除に動いたからだ。細田派の閣僚経験者が語る。
「甘利氏は岸田総理に、失言が多い麻生さんを閣内に置いておけば政権の足を引っ張られると忠告して実権のない副総裁に棚上げさせた。さらに細田派に手を突っ込んで安倍さんに批判的な若手リーダーの福田達夫氏を総務会長に大抜擢。官房長官人事でも安倍さんが強く起用を求めた萩生田光一氏ではなく、細田派ながら安倍さんとは距離がある松野博一氏を起用して狡猾に安倍さんと麻生さんの力を削いだ」
甘利氏は所属する麻生派とは別に派閥横断的な政策集団「さいこう日本」(19人)を主宰し、甘利グループとして活動している。