訪日観光客が激増していた時期、爆買いツアーなどでデパートや高級店だけでなくドラッグストアなどの量販店にも多くの外国人観光客の姿があふれていた。多くの日本人は、日本で販売されている商品の質が高いからだと考えていたが、外国人の本音は「日本は安い」からだった。モノもサービスも日本と日本人は安い「チープジャパン」が真実だった。俳人で著作家の日野百草氏が、「日本人は安い」と仕事を依頼する中国のオタクカルチャー産業が、日本の女性声優にもコンテンツとしての可能性を見出している現状を聞いた。
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「大陸から面白い依頼がありましたよ、日本の人気声優が欲しい、中国ならもっと売れると」
ぜひ話を聞いて欲しいとメールをくれた栗田新二氏(40代・仮名)。筆者の古い知り合いだが、もう10年以上会っていなかった。拙ルポ『アニメやゲーム業界「日本人は安くて助かります」その由々しき事態』を読んで連絡をよこしたという。この記事をきっかけにアニメやゲームはもちろんIT、運輸、建設など他にも多くの中抜き(経済用語ではなくピンハネを意味する俗語)情報が寄せられたが、疎遠だったとはいえそれなりに知った仲でエビデンスの容易な栗田氏の電話を優先した。中抜き問題はこれからも追及する。
いま彼は主に電子コミックを手掛けるプロダクションにいる。この会社は中国とのマーケティング企画なども手掛けている。彼自身もかつてメディアミックス系の出版社にいたため声優業界にも精通している。いまはなき声優誌のライター経験もある。
「中国系エージェントの日本事務所からですけど、日本の声優は中国で大人気なんです」
日本の声優、とくに若手女性声優は中国でも大人気だ。コロナ禍もその人気は衰えを知らない。水樹奈々、花澤香菜といった不動の大人気声優を筆頭に日本の女性声優が次々と取り上げられファンを獲得している。豊崎愛生や徳井青空は中国最大級の動画共有サイト「bilibili(ビリビリ)」にチャンネルを開設、大橋彩香も同じく「bilibili」でオンラインライブを開催する常連だ。上坂すみれは「政委」(司令官の意味)として崇められている。
「日本語のままがキュートみたいで、中国語できなくてもいいみたいですね」
日本の若い女性アイドル声優は中国人のオタク男性にとって特別
中国のオタクは古くから日本のアニメを字幕で見ていたので気にしない。むしろ日本の女性声優の声がなければ、というファンが大半だ。
「中国も声優はいますけどね、日本の女性アイドル声優に比べたら扱いは低いです」
中国では声優のことを「配音演員」と呼ぶ。最近では日本語の「声優」が浸透しているようだが、「アイドル声優」という文化を模倣しようとはしても育成はまだまだ。日本独特の文化とそれに裏付けられた育成システム、そして人材は一長一短にはいかない。