五木寛之さんは、佐藤愛子さんの『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』が老若男女に読まれている理由について《時代と人生について「もののあはれ」を無意識に体感するところがあるからではあるまいか》と分析した(『サンデー毎日』10月10日号「五木寛之のボケない名言」より)。今回、紹介する3人もまた然り、思うところが多かったようだ。笑った後に訪れた感慨とは──。
「佐藤愛子さんが最後の本を出されましたね。もうね、シャレてる。若い頃から佐藤愛子さんの大ファンでね。エッセイを読むとあのかた、すぐカッカカッカと怒るんですよ。やっぱり怒っているエッセイは面白い。痛快!」
そう興奮気味に語ったのは上沼恵美子(66歳)。上沼がパーソナリティーを務める大人気ラジオ番組『上沼恵美子のこころ晴天』(ABCラジオ。10月11日放送)での一コマだ。さらに上沼はこう続けた。
「最後、面白いですよ。もうサッと読めますけど、最後に、みなさんありがとうございましたって、『ごきげんよう』みたいな感じで終わるんです。もうなんか、ジーンと来たわ。大層な口上を述べて終わるんではなくて、『そんじゃ、この辺でペンをおきますわ。ほな、さいなら』みたいな。カッコいいですねぇ。あんなん、なりたいわぁ」
そして「やっぱりああいうかたは財産やなぁ、日本の!」と褒めそやした。『文藝春秋』8月号で「芸能界を引退しようと思った」と明かした上沼だけに、自分の引き際と重ねた部分もあったのかもしれない。番組を聴いた50代女性はこう話す。
「あの毒舌で知られる上沼さんが佐藤さんに限っては手放しで褒めていたので、まさか上沼さんも引退するの!? って驚きました。本も読んでみたくなって、番組が終わった後、すぐに書店に買いに走りました」
本のタイトルは『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(以下、『九十八歳』)。11月5日に98歳になる佐藤さんの最新エッセイ集だ。佐藤さんはこの本の最後の一編「さようなら、みなさん」で《かくして私はここに筆を措きます。見渡せば部屋は床一面の反古の山。これからかき集めて、メモ用紙を作ります。それで終りです。/みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります》と綴って断筆宣言した。今年8月に発売されるやベストセラーとなり、現在20万部を突破している。
まるでいにしえから伝わる民話のよう
辛酸なめ子さん(47歳)は以前、佐藤さんと雑誌で対談したときの印象をこう語る。
「佐藤さんは本の印象通り、竹を割ったようにサッパリとしたおかたで、ブレがない。それでいて上品さも漂う。『なんでもできる器用な人はつまらない』『亭主の出来不出来で女の一生が決まるのはたまらない』など、真実を突いたお話も多く、納得したことを覚えています」(辛酸さん)