和田アキ子(71才)が手術を受けたことで広く知られるようになった「眼瞼下垂」。なんらかの要因で上まぶたが下がってきた状態であり、一般的には加齢とともに皮膚がたるみ、かつ、まぶたを引っ張り上げる腱膜などが弱って、50代以降に生じやすい。しかし、ただの老化と油断してはいけない。道玄坂加藤眼科院長の加藤卓次さんはいう。
「眼瞼下垂は脳腫瘍のサインの場合があります。まぶたを開けるための神経が腫瘍によって圧迫されていることが原因です。また、糖尿病は全身の神経にダメージを与えるため、まぶたが下がってきて眼瞼下垂になるケースもあります」
重大な病気かどうかは、眼瞼下垂が両目に起きているか、片目のみなのかも判断の手掛かりになる。
「加齢の場合は両方のまぶたが徐々に下がってきますが、片方だけ急激に下がった場合は神経の異常であることが多い。必ず眼科を受診してください」
眼瞼下垂は目が細くなったように見えるため、加齢で目が細くなったと早合点した人がアンチエイジング目的でまぶたを上げる施術をしようとするケースがある。井上眼科病院名誉院長の若倉雅登さんは、これに眉を顰める。
「眼瞼下垂には、さまざまな原因がある。たとえば重症筋無力症という難病の初期症状の場合も。まぶたが下がっている原因を調べずに手術を受けてしまうと、みすみす病気を見逃すことになりかねません」
重症筋無力症とは、運動神経の命令が筋肉に到達しにくくなって筋肉の力が弱ってしまう病気だ。全身型では手足に力が入らなくなり、呼吸がしづらくなることもある。
ほかにも、眼瞼下垂から発覚する病気がある。「痙攣」という言葉を使うため誤解されがちなのが「眼瞼痙攣」だ。
「これはまぶたが開けにくくなる病気ですが、原因はまぶたではない。大脳基底核にある運動を制御するシステムが薬などなんらかの影響で“誤作動”して、自在にまぶたの開閉がしにくくなるのです。
症状としては、まぶしさを感じて目を開けにくくなり、無理をして目を開けていると疲れ、頭痛、吐き気などを感じます。必ずしもまぶたがぴくぴくする病気ではありません。一般的な眼科では眼精疲労やドライアイと診断されがちなので、心配な人、特に睡眠導入薬を使っている人は神経眼科へ行った方がいい」(若倉さん)