緊急事態宣言が解除されて半月以上がたった。各地でにぎわいが復活しつつあるが、秋の観光シーズンを迎えた京都はどうなっているのか──。ジャーナリストの山田稔氏が現地レポートする。
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京都市などに出されていた飲食店に対する営業時間短縮と酒類提供制限の要請が10月22日、およそ半年ぶりに解除された。解除後初の週末となった10月23日の土曜日、清水寺や嵐山周辺など人気スポットはかなりの人出があった。京都府の「きょうと人混みエリアマップ」によると、観光客に人気の錦市場・新京極の日中の人出は「500mメッシュ(区画)当たりの人口が1万2000人以上」となっていた。
前日の10月22日(金曜日)は同じ時間帯で「6000人以上」だったから、倍増したことになる。時短要請の解除で観光客が戻ってきていることは間違いないようだ。紅葉シーズンに向け、ひと安心といったところだろうか。
10日ほど前の平日に、取材で関西を訪れたのを機に京都の街をウォッチングしてきたが、そのときは時短要請解除前で、街の様子がまるで違っていた。ちなみに同マップで確認すると、その日の同じ時間帯の錦市場・新京極の人出は「6000人以上」となっている。以下は、時短要請解除前の京都の街中の様子だ。
お寺は静けさを取り戻したが…
街歩きのスタートは四条通からだ。四条大橋を渡り、四条通から祇園方面に向かう。午前中ということもあってか人通りはまばらだ。停留所でバス待ちの学生が西田幾多郎の本を読んでいた。京大生だろうか。南座では滝沢秀明が構成・演出を手掛ける「虎者NINJAPAN2021」を上演中だ(10月6日から28日)。
花見小路に入り、のんびりと歩く。着物姿の女性がすれ違う知り合いとあいさつしている。祇園のまちの日常といったシーンだ。古びた板壁に「吉例顔見世興行 南座」の張り紙。今年は12月2日が初演となっている。
コロナ前はインバウンドであふれ返っていた通りも、本当に行きかう人が少ない。
通りの突き当りに京都最古の禅寺がある。1202年開創の建仁寺である。門の前に「大双龍図公開中」とのポスターが貼ってあったので立ち寄ってみることにした。拝観料600円を払い堂内に。下駄箱に置かれた靴の数からすると、拝観者は10組もいないのではないだろうか。広い寺の中をゆっくりと巡ることができる。
お目当ての「双龍図」(小泉淳作筆)は法堂の天井画である。平成14年に創建800年を記念して描かれたものだという。ものすごい迫力で拝観者は夢中になってスマホで撮影している。このほか桃山時代に書かれた「雲龍図」など方丈襖絵の数々(重要文化財)は、高精細デジタルで複製され一般公開されている。こちらも見事だった。
「方丈」(重要文化財)の前には「大雄苑」という枯山水の前庭が広がる。廊下に座ってじっくりと鑑賞する。観光客の多い時期にはまずできないことだけに、貴重なひとときだ。
建仁寺を後にして、「悪縁を切り良縁を結ぶ」とされる安井金比羅宮を通りかかると、若い女性たちが必死に祈願していた。コロナ禍が続く状況だけに、良縁を求める気持ちが強くなっているのだろうか。