香港大学のキャンパスに設置されている、1989年6月の天安門事件の犠牲者を追悼する彫刻が、最近の中国政府の香港への思想統制的な動きに伴って撤去されることが決まった。しかしこの彫刻の作者であるデンマーク人の芸術家が香港大学に対して、彫刻は香港大学に貸与しただけであり、所有権は自分にあるとして、「解体、撤去のプロセスを自分で指揮したい」と主張し、大学側と争っていることが明らかになった。
大学側は「法的助言を求め、関係者と協力して、この問題を合法的かつ合理的な方法で処理していきたい」とのコメントを出しているが、作者は「大学側に処理を任せると、解体され廃棄されることは目に見えている」と主張している。香港メディアが報じた。
彫刻は重なり合った裸の人々が弾圧によって苦悶の声を上げ、全身の苦痛に耐えている様子を表現したもので、作者であるイェンス・ガルスキオット氏は「Pillar of Shame(恥の柱)」と名付けた。
この彫刻は香港の民主化団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」(支連会)が香港大学に設置し、すでに24年間が経過しているが、支連会がこのほど解散したため、大学側が撤去を決めた。
しかし、このことを知ったガルスキオット氏が「彫刻を撤去するのならば、作者である自分の許可が必要であり、自分がその作業の指揮を執りたい」として、弁護士を通じて、大学に手紙を出したという。
同氏はAP通信に対して「この彫刻は天安門事件を象徴する、香港にとって非常に重要なものだ。香港が中国の一部になったとはいえ、香港人には自分たちの物語を記憶する権利があり、1989年に亡くなった人たちを追悼するために記念碑に花を供える権利があることを表している」と語っている。