超短期決戦を選んだ岸田文雄・首相だが、総選挙情勢は「大敗ライン」の自民党単独過半数(233議席)を割り込むか、なんとか単独過半数を維持できるかの瀬戸際に立たされている。選挙期間中に内閣支持率が急落しているからだ。
NHK調査では岸田政権発足当初の支持率49.1%(10月8~10日調査)から、わずか1週間後には46%(同15~17日調査)と3ポイントダウン。逆に不支持率は4ポイント(24.3%→28%)増えた。
支持率が高かった読売新聞の調査でも発足当初の56%(10月4~5日調査)から52%(同14~15日調査)へと10日間で4ポイントも下がっている(不支持率は3ポイント上昇)。総選挙の議席に直結する自民党の政党支持率はNHK、読売ともに約3ポイントダウンだ。
最大の理由は岸田首相が総裁選で「富の再分配」を掲げて「金融所得課税の強化」や「令和版所得倍増」を公約しながら、総選挙の公約には盛り込まずにいつの間にか“撤回”した朝令暮改だろう。国民の期待がしぼむのは当然だった。
選挙戦は野党が多くの選挙区で候補者1本化を進めたことから、自民党は“魔の3回生”などの若手ばかりか、閣僚経験者など大物議員も苦戦や接戦に追い込まれ、50前後の選挙区で当落線上にある。
この支持率低下が投票日まで続けば、超短期決戦でも逃げ切れずに「自民党大敗」の流れに向かう。そうなれば、岸田首相は選挙後に窮地に陥る。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「自民党が単独過半数を失えば、岸田首相は連立相手の公明党に生殺与奪の権を握られると言っていい。キングメーカーの安倍晋三・元首相や麻生太郎・副総裁に政策を指示されても、公明がウンと言わなければ法案1つ通せないわけです。
それを防いで政権の独立と首相の座を守るためには、同じ保守政党で議席増が見込まれる日本維新の会と政策的に手を組んで公明を牽制し、たとえ公明が反対しても、いざとなれば自民と維新で法案を通せる関係をつくることが不可欠になる」