米政府は2021年6月、2004年以降に米軍などから寄せられた「UFO目撃情報」の調査結果を公表した。UFO(未確認飛行物体)をUAP(未確認空中現象)と再定義し、調査対象144件の大半が「説明不能」であることを認めた。一方の日本政府は、UFOをどうとらえているのか。福田康夫内閣(2007年9月~2008年8月)で防衛大臣を務めた石破茂氏が「UFO問題」について語った──。
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日本政府は2007年、山根隆治参院議員(当時)の質問主意書に応じ「未確認飛行物体の存在を確認していない。特段の情報収集、外国との情報交換、研究はしていない」という趣旨の答弁書を閣議決定した。
当時、防衛大臣だった私は「UFO(未確認飛行物体)や、それを操る生命体が存在しないと断定できる根拠はない」と私見を述べた。今もその考えは変わらない。防衛大臣在任中は、制服組を交え「異星人やゴジラが襲来したらどうするか」といった極限事態の対応を大真面目に議論した。
UFOや未知の生物は未確認、未知だからこそ、現在の法律や運用で想定していない事態がありうるからだ。自衛隊が出動する行動類型も、災害派遣なのか、海上警備行動なのか、それとも治安出動なのか──。
異星人が明確な意図をもち東京を攻撃し始めたなら、主権国家による武力攻撃に準ずると解釈、防衛出動になるだろう。ゴジラが襲来した時は自然災害の一種として災害派遣、排除には治安出動になるだろう。防衛省内でこんな議論をしたのは後にも先にも私ぐらいかもしれないが、あらゆる「あり得ない」事態を想定するのも安全保障の基本だ。
世界を見れば米国だけでなく、先進国の多くがUFOの調査を行なっているようだ。自国の脅威になりかねない飛翔体の正体究明は「国民に対する国家の責任」という認識があるからだ。
だが、日本にはそうした意識がない。私も「政府内のどこかで極秘裏に調査しているはず」と思っていたが、そうした組織は恐らく未だにどこにもないと思う。