頻繁にSF作品の題材にされるなど、多くの人々の知的好奇心と未知なるものへのロマンをかき立ててきたUFO(未確認飛行物体)。その魅力の虜になったひとりに、テレビプロデューサーの矢追純一氏がいる。日本テレビのディレクターとして数々の名番組を手がけた矢追氏だが、UFOとの出会いは偶然だった。矢追氏が語る。
「『11PM』のプロデューサーから何でも好きな番組を作っていいと言われ、ふと“空を見上げる”番組を作りたくなったんです。当時はうつむいて窮屈そうに歩く日本人が多かったからね。ちょうどその頃書店で『空飛ぶ円盤』の本を見かけて、これだと思った。それまでUFOや宇宙人のことは何も知りませんでした」
1968年に『11PM』で、日本初となるUFO番組を放送した。生放送中、屋上に設置したカメラでUFOの出現を待つ設定だったが、放送当日にプロデューサーに呼ばれた矢追氏は、「本当に宇宙人が来たらどうするんだ」と尋ねられた。
「そんなこと考えてなかったから、咄嗟に『接待ぐらいしないといけませんね』と答えた。するとプロデューサーは社長専用の応接室を用意して、『宇宙人様御席』との札をかけました(笑)」
斬新な番組は大反響を呼び、その後の矢追氏は世界中でUFO取材を重ねた。
「ロズウェル事件に関連しエリア51を取材した時は、故障車を修理していると見せかけ、ボンネットの隙間から隠しカメラで撮影しました。すると真っ黒いヘリが急に現われ頭上を旋回し始めた。こりゃヤバイと宿に戻ると、『ジャパンからヤオイが来ただろう』と謎の男から電話があったと告げられた。宿の主人に伝言がないか尋ねると、男は『He Will Know(いずれわかるはずだ)』と答えたそうです。それを聞いて、やはり見張られているのか……と絶句しました」
視聴率20%を超える特番を作り続けた仕掛け人は、「ワクワク、ドキドキが高視聴率のカギ」と語る。
「今のテレビはどう終わりまで持っていくか決まっているけど、僕の特番は仕掛けがなく行き当たりばったりで、ワクワクしながらカメラを回していました。視聴者も僕と一緒にいる感じで、何が起こるかドキドキしながらテレビを見ていたのでしょう。それで高視聴率になったのだと思います」
※週刊ポスト2021年11月5日号