中国のZ世代を中心に若者の間で「スニーカーブーム」が巻き起こり、社会問題となっている。転売アプリではスニーカーが通常販売価格の20~30倍もの金額にあたる50万~100万円(約3万元~約7万元)で取引されており、その値段でも買いたいという若者がアプリに殺到しているというのだ。中国で一体何が起こっているのか。千葉大学客員准教授でジャーナリストの高口康太氏がこう分析する。
「ミレニアル世代(1980~95年生まれ)、Z世代(1996~2015年生まれ)の間でスニーカー熱が加速しています。中国の若者の給料はそれほど高くないが、経済全体が右肩上がりということもあり、稼いだお金は貯金に回すよりも、使ったり投資したりしたほうがいいという考え方が主流です。特に結婚前は住宅ローンも養育費もかからないため、独身貴族の可処分所得が高い。それに加え、この世代は一人っ子政策(1979~2014年)の影響で兄弟姉妹がいないケースばかりのため、親のお金がひとりの子に集中し、自由に使える金額が大きいのでしょう」
ファッションアイテムとして購入するだけではなく、スニーカーは投資対象にもなっているという。
「中国以外の国でもスニーカーなどを扱う転売サイトは多々ありますが、中国人はお金儲けが好きということもあって、その盛り上がりは他国を凌ぎます。カジュアル商品の仲介サイト『得物』では、直近価格や新製品などの情報が出ていて、透明性も確保されている。ユーザーが『得物』を通じて中古スニーカーを売買する際は、いったんそこの運営会社に商品を送り、運営側がその商品を偽物かどうか鑑定する仕組みがある。
会社が鑑定してくれる仕組みがあるから、信頼性が担保されたなかで小遣い稼ぎをできる、というのが若者にとっては魅力なのでしょう。日本でもスニーカー投資をやっている人はいるが、中国は母数となる人口も多いし金持ちも多いので、驚くような金額につり上がることもある。1000万人以上がスニーカー投資をやっていると言われています」(高口氏)