ライフ

ヤクルトとオリックス、まさかのリーグ優勝から勇気を授かる思考法

時事通信フォト

胴上げされる高津監督(時事通信フォト)

 勝負はフタを開けてみなければわからない。改めてそう思わせてくれる2021年のプロ野球シーズンだった。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 世の中、何が起きるかわかりません。今年のプロ野球は、そのことをあらためて思い知らせてくれたと言えるでしょう。セ・リーグはヤクルト、パ・リーグはオリックスと、どちらも2年連続で最下位だったチームがリーグ優勝を果たしました。

 この先、日本シリーズへの出場権をかけたクライマックスシリーズがありますが、2021年のシーズン全体を通して「リーグでもっとも強かった」のは、この2チームです。シーズン前にこの結果を誰が予想したでしょうか。そう、誰も予想していませんでした。

 毎年、プロ野球の開幕前には、たくさんの野球評論家やスポーツメディアが、今シーズンの順位を予想します。たとえばフジテレビ系の『プロ野球ニュース』では、22名の解説者が予想を発表しました。セ・リーグは6割以上に当たる14名が、2年連続リーグ優勝を果たしている巨人の優勝を予想(実際は3位)。パ・リーグも13人が、日本一4連覇を成し遂げたソフトバンクの優勝を予想しました(実際は4位)。

 セで優勝したヤクルトは、22人のうち半数の11人が最下位になると予想。5位が7人で4位が2人。Aクラスの3位になると予想したのは江本孟紀氏とヤクルトOBの真中満氏だけでした。パで優勝したオリックスも、最下位が3人、5位が10人、4位が8人。3位と予想したのは松本匡史氏だけです。1位か2位になると予想した人はゼロでした。

 いわゆる一般紙も、順位予想はありませんが、開幕前にはシーズンの展望や各チームに関する寸評を掲載します。ヤクルトは「投手陣に不安残す」(毎日新聞)、「先発陣の枚数に不安を抱える」(朝日新聞)、「苦しい投手陣」(読売新聞)と投手力を酷評されました。しかし、エースの小川や2年目の奥川らの活躍で、リーグ3位の防御率を残しています。

 オリックスも、投手陣は比較的高評価でしたが「課題は2年連続リーグ最少の得点力」(毎日新聞)、「得点力不足解消が課題」(読売新聞)と、打撃が不安視されていました。ところが、主砲の吉田(正)が2年連続首位打者となり、大化けした杉本が3割30本を達成して本塁打王に輝くなど、チーム打率と本塁打数でリーグ1位となっています。

 いや、予想が外れたことを責めたいわけでも揶揄したいわけでもありません。予想は外れるものであり、外れるからこそ世の中や人生が楽しく盛り上がってくれます。あらためて思い知ったのは「あいつはしょせん負け組」「あの会社(メンバー)にこんなことはできっこない」という決めつけは、ひじょうに危険だということ。逆に「あいつにはかなわない」「どうせまたあの会社の勝ち」といった負け犬根性を持つ必要はないということ。

 世の中の大半は、巨人やソフトバンクのような「勝って当たり前の存在」ではありません。そういう人は、例えとしての「去年までのヤクルトやオリックスのような存在」なんて眼中にないでしょう。ほとんどの人は、ヤクルトだったりオリックスだったり、あるいは中日だったり日本ハムだったりします。

 ところが、ヤクルトもオリックスも見事にやってくれました。予想を覆して、客観的な戦力不足を各自のやる気やチームワークではね返しました。両チームのファンじゃなくても、ぜんぜんかまいません。次の3つの勇気を授かってしまいましょう。

その1「どうせ勝てないと見られているからといって卑屈になる必要はない」
その2「手持ちの武器が足りなくても、どうにかなるときはどうにかなる」
その3「負けても失うものはない。もし勝てたら、爽快感は半端ではない」

関連キーワード

トピックス

過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン