自民党埼玉県連会長などを歴任した山口泰明氏は衆院当選7回のベテラン。菅政権で党選対委員長を任されたが、7月に、「新しい力、人材にこの国の未来を託したい」と政界引退を表明した。未来を託された後継者が次男で秘書だった晋氏だ。父の引退表明を受けて埼玉10区から自民党公認で出馬、小選挙区で接戦となり、深夜23時過ぎに当選確実が出た。山口泰明氏にとって今回の選挙は代議士の地位と地盤を息子に「世襲」させるために絶対に負けられない選挙だったことは容易に想像できる。
その寄附が行なわれたのは総選挙が差し迫った今年9月、山口氏が会長兼社長を務める「坂戸ガス」から坂戸市に1000万円、鶴ヶ島市に350万円、鳩山町に150万円など選挙区内の3自治体に少なくとも総額1500万円が寄附された。ちなみに同社はこれらのエリアに都市ガスを供給している。坂戸市の担当者が語る。
「坂戸ガスの50周年記念事業の一環として寄附をいただいた。申請が9月17日、振り込みが9月30日。寄附を受けることを決裁したのは市長です」
他の2市でも山口氏が現職代議士だった9月30日に振り込まれたことが確認できた。
鶴ヶ島市は市役所内で寄附の「贈呈式」を行ない、鳩山町は『広報はとやま』10月号で寄附を告知している。
その2週間ほど後、選挙区の有権者に自民党機関紙『自由民主』の号外が新聞折り込みなどで配布された。1面には赤地に白抜き文字で「山口すすむ」という名前とガッツポーズの写真、その下に父・泰明氏の写真と「山口すすむが、継承します」と後継者の紹介。裏面には、寄附を受けた坂戸市長、鶴ヶ島市長、鳩山町長をはじめ選挙区内の3市7町の首長(町長が野党系の吉見町だけは町議会議長)の顔写真がズラリと並び、〈地域の発展のため山口すすむ支部長の力が必要です〉というメッセージがあった。