「体のために、納豆や豆腐など、大豆食品は毎食必ず取り入れています」「食後に旬のフルーツで食物繊維を摂ることも欠かしません」──。健康意識が高い人ほど“体にいい食べ物”を積極的に、そして定期的に摂ることを心がけているだろう。しかし専門家から見れば、よかれと思ったその行動で健康を害する危険性があるという。田中病院院長の田中優子さんが指摘する。
「『過ぎたるは猶及ばざるがごとし』ということわざがありますが、これは心身の健康を保つ方法においても同じこと。どんなに体にいいものでも、過剰になれば弊害が起こります。例えば『水分補給は重要』といわれますが、6リットル飲めば亡くなる危険が生じますし、体に必須の塩分も小さじ48杯で死亡リスクがある。これはどんな食品においても同様です」
では、特に食べすぎに注意すべき食品は何なのか。食と健康の専門家たち15人が理由とともに挙げた「ワーストランキング」は驚くべき結果だった。
【以下、15人の「食と健康の専門家」に「食べすぎると毒に変わる食品」を挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計した。
植田美津恵さん(医学博士)、小倉朋子さん(トータルフード代表)、大西睦子さん(内科医)、黒田愛美さん(医師/アスリート)、佐々木欧さん(医師/秋葉原駅クリニック)、白澤卓二さん(医師)、清水加奈子さん(管理栄養士)、田中優子さん(医師/田中病院院長)、中沢るみさん(管理栄養士)、福田千晶さん(医学博士)、福田正博さん(糖尿病専門医/臨床内科専門医)、牧田善二さん(医師)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会)、森昭彦さん(サイエンスジャーナリスト)、森川貴さん(医師/大阪市立総合医療センター腎臓・高血圧内科)】
海外では危険視されるひじき
1位のひじきはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富でカロリーも低く健康的な食品の代表格のような存在だ。だが、医学ジャーナリストで愛知医科大学客員教授の植田美津恵さんは海外での扱いは正反対だと指摘する。
「イギリスでは2004年、『ロンドンで売られているひじきにはヒ素が含まれているため、食べないように』との勧告が出されました。これを受けて東京・江東区の保健所が国産のひじきを調べたところ、イギリスと同じ結果が出ましたが、日本ではいまも通常通り販売されています。ヒ素による急性中毒は死に至る危険性があり、慢性中毒では嘔吐や食欲減退、皮膚の発疹や炎症、さらに知覚障害や運動障害を引き起こします」
もちろん、少量ならば体に影響はないとされているが、間違いなく“ばっかり食べ”は避けるべきだろう。また、ひじきは長らく“鉄分が豊富”とも称されていたが、2015年に文部科学省が発表した「日本食品標準成分表」によれば、その含有量は15年前と比べて9分の1以下になった。
次いで票を集めたのは、一世帯当たりの年間消費量が20kgを超えるまぐろだ。内科医の大西睦子さんが解説する。
「神経発達障害や認知能力の低下、心血管疾患の増加などを招くとされる『メチル水銀』の含有量が多いことが気がかりです。ほかの魚にも同様の危険性はありますが、大型の魚になるほどその量は増え、小魚の100倍に達すると考えられています」
まぐろはEPAやDHAといった良質な油分である「オメガ3系脂肪酸」を含有するため、心血管疾患予防や子供の認知機能向上をはじめとしたさまざまな健康効果が報告されているが、食べすぎればまったく逆の結果を生む。