《本当に毎日毎日絶望》、《助けて欲しい。もう辛いんです 限界です》──。そんな悲痛な叫びが、毎日山のように届けられる。送信しているのは、まだ年端もいかない子供たちだ。文部科学省が10月13日に発表した「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2020年度の国公私立小・中・高校が把握し文科省に届け出た子供の自殺件数は、過去最多の415人。高校生が305人と約7割を占めた。先進国の中でも、日本の子供の自殺率はワースト1位だ。
中央大学人文科学研究所の客員研究員で、精神看護学が専門の高橋聡美さんは、この状況に危機感を募らせる。
「2006年にできた自殺対策基本法は、おもに中高年男性への自殺対策が重点事項でした。一方、18才以下の子供は置いてけぼりの状態が続いている。とりわけ2016年の法改正以降、子供の自殺件数は毎年1割ずつ増えている状態です」
子供の自殺というと、原因に学校でのいじめやトラブルを思い浮かべる人も多いだろう。だが、2020年度のいじめの認知件数は、過去最高だった2019年度より9万5333件減少した51万7163件。
一方、自殺の要因として増加傾向にあるのが「家庭問題」。昨年、自殺した子供が置かれていた環境の中で最大の割合を占めたのが「家庭不和」で、12.8%。つまり、子供の自殺の原因が、学校から家庭に移りつつあるということだ。
冒頭のメッセージは、NPO法人若者メンタルサポート協会理事長の岡田沙織さんが行うLINE相談に寄せられたものだ。月に4万件届く声のなかには、家庭に問題やストレスを抱えるメッセージも多い。
家庭不和において重要なポイントは“子供がどう感じているか”だという。岡田さんが語る。
「悩んでいる子のなかには、虐待を受けている子ももちろんいます。子供にとっては両親が不仲だったり、抑圧的であるだけで相当なストレス。家族関係の歪みのしわ寄せが当人に向かってしまい自殺を選んでしまうのです」
さらにこう続ける。
「新型コロナによって外出に制限がかかり、親も子供も自宅で過ごさなければならない時間が増えました。親の内向きなストレスが家庭内で子供に向けられ、普通の家庭が崩壊するケースもあります。
子供にしてみれば、学校も休校になったりして、家にいなければならないのに、居場所がないし息が詰まる。でも、逃げ出したくても家以外どこにも行き場がない。八方ふさがりになり生き地獄のような日々を送ることになるんです。そして、最悪な手段に走ってしまう」