EDは患者の置かれた状況に応じて、様々な治療法が用意される。その中でも、EDだけでなく「生きる活力も失ってしまった」と感じる人に効果があるのが「ホルモン補充療法」だ。満岡内科・循環器クリニック院長の満岡孝雄医師が語る。
「勃起する際、ペニスの血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素を増やす働きがあるのが、男性ホルモンのテストステロンです。ホルモン補充療法では、減少したテストステロンを体内に注入して、一酸化窒素の分泌を増やし勃起機能を改善します」
勃起に欠かせないテストステロンの減少には、2つの理由が考えられる。ひとつめは、「男性更年期障害」の影響だ。
「男性更年期障害になるとテストステロンが減少し、それに伴ってEDとともにうつの症状が出やすくなります。40~50代の男性でEDとともに、『元気がない』『朝起きても会社に行きたくない』『疲れが取れない』などの症状が出たら、男性更年期障害を疑うべきです」(満岡医師)
もうひとつが、「加齢」である。
「加齢に伴う精巣機能の低下によっても、テストステロンが低下します。テストステロンの量と朝勃ちの回数には相関関係があり、50代以上で朝勃ちが減ると、テストステロンの減少により勃起機能が低下した疑いがあります」(同前)
いずれのケースも検査でテストステロンが不足していれば、ホルモン補充療法の対象となる。
実際にホルモンを補充する方法は2通りある。「ひとつめは注射です。2週間に1回ほどの頻度で、テストステロンを腕に注射します。新型コロナのワクチンと同じ筋肉注射で痛みはほとんどなく、注射から2~3日で体内のテストステロン濃度がピークに達します。
もうひとつは軟膏を塗布する方法。陰茎より皮膚が柔らかく、吸収の良い睾丸部分に、医師の指導に応じた適量の軟膏を塗り込みます。1日1~2回ほど継続的に塗ることで、1週間ほど経つとテストステロンの血中濃度が一定に収まります。匂いは無臭で不快なベタ付きはありませんが、軟膏を塗布した部分が下着などに触れると効果が薄れるので、塗布時はよくすり込むことが大切です」(同前)