1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝。2001年に全国リーディングを獲得するなど通算2541勝、海外・地方を合わせて2598勝の歴代4位。フジヤマケンザンで日本馬初の海外重賞勝利、エルコンドルパサーのフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍した名手・蛯名正義氏が、2020年に調教師試験に合格した。2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする蛯名氏による、週刊ポスト連載『エビジョー厩舎』。今回はゼロからのスタートについてお届けする。
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いまは藤沢和雄厩舎で技術調教師として開業前の修業中です。藤沢先生からは、いまさら乗るのがうまくなってもしょうがない(笑い)、馬の上からではなく、地上から全体を見られるようにと言われており、馬にはいっさい乗っていません。
馬に乗ったスタッフの意見を聞いて、自分で見た印象とどう擦り合わせていくかという繰り返しです。自分で乗れば、その一頭のことは分かるけれど、調教師になったらすべての管理馬のことを知っていなければならない。全部乗ることはできないので、乗った人から話を聞いて状態を理解することが大事です。
これがとても難しい。
自分の印象と乗った人の意見が違うときは、その話を分析して原因を追求しなければならないし、今後の方針も決められないわけです。もどかしいこともありますが、逆にスタッフと同じような考え方だったり、馬のつくり方での意見が一致したりすれば、それは強みになるわけです。
ジョッキーの時は、馬場に出れば自分一人で、味方は乗っている馬だけだったけれど、今度は裏方になって、馬主さんやジョッキーや厩舎スタッフとチームになって喜びも苦労も分かち合えるのが、楽しみです。
これからはジョッキーの立場から見たことだけではなく、調教師という立場に立ってみて初めて経験することもあるでしょう。この連載ではそういったことを読者の皆さんに「配信」して、競馬の面白さ、奥深さや、サラブレッドという動物の魅力をお伝えできればいいと思っています。