地球温暖化が進み海水が温まると、海から空へ上昇する水蒸気が今まで以上に増える。それが大雨や暴風にかたちを変え、台風も凶暴化。SFの世界で語られる「地球沈没」は、地震や火山噴火の天変地異に加え、海面上昇、大型台風のオプション付きでリアルなシナリオとなりつつある。
だが、毎年ひたすら台風被害を耐え忍ぶばかりではいられない。2021年10月1日、台風に特化した研究機関「台風科学技術研究センター」が横浜国立大学の先端科学高等研究院内に新設された。専門分野の異なる研究者や企業、気象研究所などの機関がタッグを組む。
目標のひとつは「台風制御」だが、けっして台風を完全に封じ込める技術を開発するのではないという。
「台風のエネルギーを奪って、勢力を一部だけでも落とす。しかも、その奪った分で今度は発電や蓄電をする。そんな技術も開発したいです。成功すれば、台風被害を抑えつつ脱炭素社会の実現に貢献できます」
そう語るのは、台風科学技術研究センター長に就任した筆保弘徳氏。2019年から運用をスタートした、自然被害をリアルタイムで予測する世界初のウェブサイト「cmap(シーマップ)」を開発したひとりでもある。(※cmapは横浜国立大学、あいおいニッセイ同和損害保険(株)、エーオングループジャパン(株)の産学共同研究で開設されたサイト。災害発生時、被害建物数や被災件数の予測を表示。誰でも無料で閲覧可)
チャーター機で「目」に突入
「これまでの研究では、今後さらに地球温暖化が進むと、今より台風の力が約10%強まるとの予測もされています」
と、筆保氏は危機感を募らせる。台風制御技術により、台風被害を最小限に食い止める研究も進めている。