身体の不調を治すために飲んでいるはずの「薬」が、「一緒に口にするもの」によっては “毒”にもなる。複数の医療機関や薬局にかかることで、薬の組み合わせ次第では効き過ぎてしまったり、思わぬ副作用が出たりするケースがある。健康の維持・増進目的で摂取するサプリや健康食品にも、薬の作用を強めたり、反対に弱めてしまうものがある。
「サプリは薬ではないから大丈夫だろう」と自己判断し、患者から医師に報告しないことが多い。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師は、こんな体験をしたという。
「60代男性患者に胃カメラで生検中、出血がダラダラと止まらなくなりました。男性は抗血小板薬のアスピリンを服用中でしたが、生検程度で血が止まらなくなることはありません。よく聞くと、イワシのサプリ(EPA)を一緒に飲んでいるとわかった。EPAと抗血小板薬を併用すると、血をサラサラにする作用が増強され出血のリスクが高まります。男性は、『サプリは申告する必要はないと思った』そうです」
日本健康食品・サプリメント情報センターの宇野文博理事は「サプリは食品だから関係ないという誤解がいちばん怖い」と語る。
「サプリや健康食品が身体に効く=作用しているのであれば、医薬品との相互作用を考えなければなりません。しかし、日本では医薬品とサプリの相互作用について細かいチェックができていないのが現状です」
セサミンでふらつく
同センターは約1200種類のサプリや健康食品について、成分の有効性や安全性、医薬品との相互作用などの科学的根拠について研究論文をもとに統計的な評価をし、サプリと薬の「危ない飲み合わせ」をまとめている。
危険度が低いものから「併用禁忌」のものまで様々だが、コンビニやドラッグストア、通販などでお馴染みのサプリも多い。
「肝臓に良い」と言われ、成分入りのドリンク剤などが広く利用されているウコンは、抗凝固薬・抗血小板薬との併用で出血のリスクが、糖尿病治療薬との併用で低血糖のリスクがある。