動画配信サービスの充実により、見逃したり、録画し忘れたりしたテレビドラマやバラエティでもかなり自由に視聴できるようになった。そうしたなか、ドラマオタクを自称するエッセイストの小林久乃氏は、現在放送中のあるドラマのリアタイ(リアルタイム視聴)がやめられないという。ドラマオタクを虜にした、吉高由里子主演『最愛』の魅力とは何か。
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物語もキャストも2021年末出血大サービス!──そう言いたくなるほど、秋ドラマは面白い。『アバランチ』(月曜夜10時〜、フジテレビ系)では綾野剛さんが法律を完全に無視して凶悪事件を解決、祝・ご懐妊の清野菜名さんは『婚姻届に判を捺しただけですが』(火曜夜10時〜、TBS系)でやたら可愛い。『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(水曜夜10時〜、日本テレビ系)の杉咲花さんは、相変わらず感動をさせてくれる……と、これ以上、面白さを語っていくと本題から外れてしまうので、この辺でとどめておこう。
強豪が並み居るなかでも、吉高由里子さん主演のラブサスペンス『最愛』(金曜夜10時〜、TBS系)は、ドラマオタクが軽く興奮している。オリジナル脚本ということで、まったく先が読めず、すべてのシーンに疑念を抱きながらまだ放送は3回を終えたところ。なぜそんなに魅力を感じてしまうのか。その理由のひとつである、物語の“主人公の幼少期〜思春期の衝動”の系譜をたどってみたい。
『白夜行』『Nのために』、そして『最愛』──TBSドラマの系譜
“主人公の幼少期〜思春期の衝動”がドラマを大きく動かしたTBS系の作品といえば、私の記憶にはふたつ残っている。
まずは『白夜行』(2006年)。主演は山田孝之さん(桐原亮司役)、ヒロインには綾瀬はるかさん(唐沢(西本)雪穂役)だ。大まかな物語は幼少期に出会ってお互いに恋心を抱いていたふたりが殺人を犯す。雪穂に性的虐待をしていた父親を亮司が、自分を売った実の母親を雪穂が殺害した。
おそらく小学校高学年設定のふたり。誰かを殺めることは犯罪であるという認識はあった。それでも安寧を求めて、大人を殺した。そこから14年間を辿ったものが『白夜行』で、原作は東野圭吾さんだった。最終回で見た、血塗れになってしまった亮司と白ファーを纏った雪穂、そして降る雪。美しく、切なかったことを覚えている。
そして2014年に放送された『Nのために』。後にこの作品で共演した賀来賢人さんと結婚した、榮倉奈々さん(杉下希美役)の主演作だった。確かドラマは殺人事件の現場からスタート。これがドラマの本筋かと思いきや、もうひとつの事件がふたりの間には潜んでいた。
そのカギを握るのは、瀬戸内海に浮かぶ島の高校で同級生だった窪田正孝さん演じる成瀬慎司。希美と成瀬はふたりとも家庭環境に悩みながら、密かにお互いを想いあっていた。そんなある日、島で放火による火事が起きて成瀬の実家が全焼してしまう。現場に居合わせた希美は、成瀬が犯してしまったものだと勘違いをして、警察から彼を擁護。ふたりは放火という罪を抱える。そして月日が流れて、社会人になったふたりが再会して……と物語が流れていく。この展開が『白夜行』を彷彿させた。原作はミステリー作家の湊かなえさんだ。