競馬へのアプローチは人それぞれだが、データ派はときに興味深い数字に引き込まれることもある。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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10月30日の阪神で岩田康誠騎手・望来騎手のワンツーが3回(父・康誠1勝、息子・望来2勝)あったことが話題になった。とくに7レースでは先行する息子のキングオブドラゴンに父のリンフレスカンテが直線大外から猛然と襲い掛かり、クビ差まで追い詰めて大いに見応えがあった。この日は同じレースでの騎乗が全部で6回あって2勝ずつ、後先では4勝2敗で息子に軍配が上がっている。
周知のように息子はここまで75勝をあげてリーディング7位。一方の父は35勝。かつてリーディングジョッキーを争った猛者も、50台を前にして騎乗数、勝ち鞍ともおとなしくなってきている。ところが、これが“父子直接対決”となるとちょっと違う結果が出てきているのだ。
今年10月末までで父子が同じレースに騎乗したのは全部で156回。そのうち父が1着になったのが18回、息子が1着になったのが16回とわずかながらも父がリードしている。やはり同じレースに乗った時は、まだ父親にはかなわないということかと思いきや、父→息子のワンツー2回に対して息子→父のワンツーは3回ある。いずれにしろ30日には5回の親子ワンツーのうち3回を見られたことになる。
つまり父は勝利数の半分以上を息子が騎乗したレースであげている。
さらに後先でも半数以上の80回は父の方が先着。勝利総数では息子に40も差をつけられながら、“直接対決”に関しては父が先着している回数の方が多いのである。本人は「関係ない」というからもしれないが、これはやはりモチベーションのなせる技ではないのか。