現在公開中のムロツヨシ主演の映画『マイ・ダディ』。本作はムロにとって初の主演映画ということもあってか、SNSなどの口コミでは、「ムロツヨシのシリアスな演技に惹き込まれる!」、「ムロさんの“おふざけ無し”の芝居にただただ圧倒された」といった言葉が並び、注目を集めているようだ。コメディリリーフとしての印象の強いムロが、今作でパブリックイメージとは異なるタイプの演技で観客を魅了している理由について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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本作は、一人の男が愛する娘のために奮闘する物語。新鋭・金井純一監督(38才)によるオリジナル作品で、映像クリエイター支援プログラム「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 2016」で準グランプリを受賞した企画を映画化したものだ。主演のムロは、この作品の台本に出会って2時間後には「この世界にいたい。この人(主人公)になりたい」と出演を即決したのだという。本作は、それほどまでにムロが、本作で描かれる物語や役に惚れ込んで臨んだ企画なのだ。
物語のあらすじはこうだ。最愛の妻に8年前に先立たれ、中学生の娘・ひかりと2人で暮らしている主人公・一男(ムロ)。彼はガソリンスタンドでアルバイトをしながら、小さな教会の牧師として地域の人々と温かい交流を結び、男手一つで愛娘を育ててきた。そんな穏やかな日々を送っていたある日、突然ひかりが倒れ、白血病だと診断されてしまう。そのうえ一男は、「ひかりは実の子ではない」という衝撃的な事実を医師から告げられる。ひかりに適合するドナーは数百万人に1人だが、血縁者は適合率が上がることに気付いた一男は、大切な娘を何としても救うため奮闘する。
ムロの他にも、本作は多彩な顔ぶれとなっている。一男の愛娘のひかり役には、長澤まさみ(34才)や浜辺美波(21才)らを輩出した「東宝シンデレラ」オーディション出身の新星・中田乃愛(18才)。父親を大切に思いながらも、つい反抗的な態度を取ってしまう少女を瑞々しく演じている。そして一男の最愛の妻・江津子役には、出演作が相次いで公開される奈緒(26才)。映画やドラマに引っ張りだこの彼女が優しい妻、母を演じ、本作の持つ温かさを底上げしている。そのほか、毎熊克哉(34才)や小栗旬(38才)、光石研(60才)ら若手からベテランまでが揃い、手堅くも挑戦的な座組となっている。
冒頭でも触れたように、ムロが映画で主演を務めるのは本作が初めて。ムロに課された役割は大きかったはずだ。何といっても彼が演じるのは“父親=ダディ”であり、タイトルロールなのである。“作品の顔”として常に映画の中心に立ち、クスリと笑えるシーンも、涙を堪えられないシーンも、ほとんどを彼がリードする形で一手に背負っていた。