ビジネス

憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる

回転寿司では、最近は寿司よりもケーキやラーメン、デザートなどサイドメニューの充実が目立つ(イメージ)

回転寿司では、最近は寿司よりもケーキやラーメン、デザートなどサイドメニューの充実が目立つ(イメージ)

 食パンや菓子パン、豆腐、ポテトチップス、冷凍食品、牛丼など、身近な食品だけでなく、電気代やガソリン代など、他分野にわたって値上げが相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きいのはもちろんだが、数年前から進行している、貿易における日本の「買い負け」も無視できない。俳人で著作家の日野百草氏が、現役商社マンに買い負けの現実と、それを理解しない日本国内の様子について聞いた。

 * * *
「日本の買い負けは深刻ですよ。いずれ国民生活そのものが立ち行かなくなるかもしれません」

 歴史ある食品専門商社に長く勤めるA氏(40代)にお話を伺う。緊急事態宣言も明け、彼の会社も飲み会OKとなった。それまではコロナ対策で業務上必要な最低限度の打ち合わせ以外は私用でも禁止だったという。その堅実な社風と同様、彼もまた真面目で国を愛する商社マンだ。本稿、業界特有の専門用語はそのまま使えないので平易に置き換えている。

「大げさではありません。アメリカも中国も日本なんか相手にしないのが本音です。日本のバイヤーは買いたくても買えない、肉も魚も油も豆も、何もかも需要分を確保できなくなりつつあるんです」

 買い負けは昨日今日に始まったわけではない。水産物などは10年前から日本は円安と中国14億人の需要によって買い負けてきた。それがコロナ禍を経て、いち早く経済を回した中国と出遅れた日本とでさらに顕著になった。

「水産物はもう価格競争から脱落しかけています。日本は元々食用魚介類の自給率は100%だった。いまも60%は維持できています。値は張りますが食卓から消えることはない。でも言い方は悪いですが、100円なんて馬鹿げた値段でクルクル回すような回転寿司チェーンは方針転換を迫られるでしょう」

 彼は「馬鹿げた値段」と口悪く言ったが、理由はその水産物を買いつけるのにどれだけ大変か、本来そんな価値ではない、そんな値段でバラ撒くなという思いからだという。商社はどこも最高益を記録するなど物価高騰の恩恵を受けている。まして飲食チェーンがどう売ろうが、エンドユーザーがどれだけ安く求めようとそれぞれの勝手かもしれないが、この国はもうそんなことを言っている場合ではない、という思いからだ。実のところ、大手回転寿司は今年に入りコスパが悪くなってきている。値段も少しずつ上げているし、寿司以外のサイドメニューでも利益を出そうと努力している。彼の言う通り、それどころではなくなってきているのかもしれない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【約4割がフジ社内ハラスメント経験】〈なぜこんな人が偉くなるのか〉とアンケート回答 加害者への“甘い処分”が招いた「相談窓口の機能不全」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【被害女性Aさんが胸中告白】フジテレビ第三者委の調査結果にコメント「ほっとしたというのが正直な気持ち」「初めて知った事実も多い」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン