2年連続の最下位、シーズン途中での監督交代。昨年の惨状から誰がこんな結果を予想できたか。ファンも評論家も「奇跡」と呼ぶオリックス・バファローズのパ・リーグ優勝だが、中嶋聡監督らにとっては“懐かしい景色”だったのかもしれない。この優勝を導いたのは、25年前、名将・仰木彬の薫陶を受け、そのDNAを引き継いだ者たちだった。(全3回の第1回)
10月27日、オリックスが25年ぶりの優勝を決めた。レギュラーシーズン全日程を終えても優勝の行方は分からず、最後はロッテの敗戦を見届けて決まる接戦だった。
ファンのみならず、首脳陣の喜びもひとしおだ。中嶋聡監督の後に胴上げされた宮内義彦オーナーのこの発言が、すべてを物語っている。
「こんなに気持ちのいい夜を過ごしたのは何年ぶりか」
近鉄と合併した2005年以降Aクラスは2回のみ。山本由伸(23)、吉田正尚(28)、山岡泰輔(26)といった侍ジャパンに選ばれる選手をはじめ、若手からベテランまで能力の高い選手が集まっているが、低迷が続いていた。
昨年8月には西村徳文監督が成績不振からシーズン途中で辞任した。2005年以降、8回目の監督交代、シーズン途中での休養・交代となると4回目という不名誉な記録だ。
中嶋氏が「火中の栗」を拾う形で二軍監督から監督代行に、オフには一軍監督に正式就任した。
球団OBで阪急のエースとして通算284勝を挙げた山田久志氏は、中嶋氏の一軍監督就任の際、こう助言をしたという。
「中嶋は最初、後ろ向きだったね。監督を務められるとは思っていなかったようだ。中嶋には“これだけ低迷しているんだから好きにやったらいいよ。喜んでやれ。こういうチャンスは願っても来ないことだ。自分でぶつかっていかないとダメなんだよ”と背中を押しました」
だが、消極的だった中嶋氏の監督就任は福良淳一GMにとってどうしても欠かせなかった。
それは福良氏がGMに就任した2018年に語った「伝統がなくなっていた。もう1回作り直さないといけない」というコメントから窺える。
「伝統」とは何か。それは25年前、仰木彬監督による「仰木マジック」で2連覇を飾った時代を指す。内野の守備の要として優勝に貢献した福良GMはフロント入りしてから、かつてのメンバーを次々と招へいしていた。