自民党と公明党は、先の衆院選での勝利を受け、大規模経済対策をまとめるための協議を本格化させていく見込みだ。岸田政権下では初めての経済対策となっているが、注目されるのは公明党が実現を求める「18歳以下の子供への1人10万円給付」の行方だ。自民党内からも容認論が浮上する一方で、給付の対象とならない世帯からすれば不公平感が拭えず、疑問の声も聞こえてくる。
18歳以下の子供への1人10万円の給付は、公明党が衆院選の公約で「未来応援給付」と題して掲げたものだ。対象となるのは約2000万人、必要な予算額は約2兆円と見込まれている。「先の衆院選での与党の勝利には、公明党支持層の組織票の力が大きかっただけに、岸田文雄首相としても公明党の要求に対して一定の配慮をする必要がある」(自民党関係者)とみられている。
ただ、給付の“対象外”となる層からは、不満や疑問の声があがる。都内在住の会社員である30代独身男性はこう話す。
「少子化が大きな社会問題なのはわかるけど、子供のいる世帯ばかりが給付の対象になるのは、正直言って納得がいかない。今年、子供が生まれた会社の同期からは、東京都の出産応援事業として育児用品などの購入に充てられる『10万円相当のポイント』がもらえたという話を聞きました。子供ができれば東京都から10万円がもらえて、そのうえさらに国からも10万円が給付されるというのは、独身の人間からすれば不公平に感じるのが当然でしょう」
日本の各種制度は、「夫婦+子供」を基本とした設計となっていることが多いため、独身者が“冷遇”されていると感じるケースは少なくない。
「配偶者控除だとか、扶養控除だとかがあって、同じ給料をもらっていても結婚して子供がいるほうが手取りは多くなるわけでしょう。会社の健康保険料にしたって、結婚して扶養する家族も加入している人と独身の人間が払う保険料は同じ額。それって独身者が、他の人の結婚相手や子供の健康保険料まで負担しているような話じゃないですか。なぜ、独身者ばかり負担が多くならなくてはいけないのか」(前出・30代男性)
厚生年金保険料についても、同様の構図があると言えるだろう。会社員の配偶者が専業主婦・主夫の場合、年金保険料を払わないでも国民年金の加入期間として扱われる「第3号被保険者」の制度がある。“年金制度にタダ乗りしている”などと揶揄されることがあるが、実際には第3号被保険者の保険料は「独身者を含めた会社員全体」が負担していると言えるのだ。ベテラン社労士が解説する。