近年、日進月歩の勢いで進化を遂げている機械翻訳の世界。10月末には、角川ドワンゴ学園がGoogle翻訳を使用して英語小論文を読むオンライン講座をスタートさせたことも話題を呼んだ。急速な進歩を見せている機械翻訳の発展の裏側を探った。
すでに2000年代より、エキサイト翻訳(2000年~)をはじめとしてウェブ上には多数の機械翻訳サイトが登場していた。しかしどれもあくまでも参考程度にしかならず、原文を訳出した日本語はそのままでは読めない不自然な場合が多かった。
ところが2010年代を通じて、機械翻訳の精度は飛躍的に向上。現在では、Google翻訳やMicrosoft翻訳、みらい翻訳、DeepL翻訳など、数多くの翻訳サイトがあり、簡単な文章であればほとんど問題なく意味の通る自然なテキストに訳出できるようになっている。
なぜ機械翻訳の精度は劇的に向上したのか。その背景について、『自動翻訳大全』(三才ブックス、2020年)の共著者でもある立教大学異文化コニュニケーション学部教授の山田優氏が解説する。
「一言で言うと、いわゆるAIの仕組みを取り入れたことが機械翻訳の精度を一気に上昇させることになりました。
もともと機械翻訳は“ルールベース機械翻訳”と呼ばれる、あらかじめ登録したルールにもとづいて原文を分析し訳出する方法を採っていました。その後、1990年代になると“統計的機械翻訳”という、統計モデルの学習を通じて訳出する方法が主流になっていきました。
しかし2016年にGoogle翻訳でAIの深層学習(ディープラーニング)を利用した“ニューラル機械翻訳”が実用化されて、これがひとつのブレイクスルーとなりました。“ニューラル”というのは、人間の脳神経の仕組みのモデル化を指しています」