新型コロナワクチンを製造している米ファイザーが、5〜11歳の子どもに対する臨床試験を終え、アメリカではこの年齢層への接種が始まった。日本では現在、ワクチン接種は12歳以上が対象だが、磯崎仁彦・官房副長官は10月28日の記者会見で、「ファイザー社から必要な薬事上の手続きがなされた場合には、有効性、安全性を確認し対処する」と述べた。10日、ファイザーは厚労省に5〜11歳向けの接種について承認するよう申請。今後、日本でもファイザー製ワクチンの接種が5歳以上に拡大される可能性が出てきた。
一方、子どもへのコロナワクチン接種をめぐってはさまざまな議論がある。接種による心筋炎の発症リスクが顕在化しているからだ。
スウェーデンでは若年層での心筋炎発症リスクの上昇を理由に、30歳以下に対し、モデルナ製のワクチン接種の一時停止措置を無期限に延長した。アメリカも、食品医薬品局(FDA)がモデルナ製ワクチンの12〜17歳向けの承認を延期する方針で、来年にずれ込むと見込まれている。
日本でも厚労省は10代と20代の男性に対して、モデルナ製ではなく、ファイザー製のワクチンの接種を検討するよう勧める方向で調整に入っている。ただ、ファイザー製なら心筋炎が起きないというわけではない。厚労省の発表によると、10月15日までにモデルナ製ワクチンを接種した20代男性で、100万人当たり25.7件、10代男性で28.8件の心筋炎などが報告されているのに対し、ファイザー製ワクチンの場合でも、20代男性で100万人当たり9.6件、10代男性で3.7件、報告されている。
アメリカは接種対象を5歳以上に引き下げたが、これまでワクチン接種で世界の先頭を走ってきたイスラエルは、検討はしているものの、まだ12歳以上という基準を引き下げていない。イギリスを除いて、ドイツやフランスなど欧州諸国の多くも日本と同じ12歳以上。スウェーデンでは、肺疾患や重度の喘息などの高リスク疾患がある場合に限り、12歳以上まで認めている。一方、中国は3歳以上、チリでは6歳以上に対象を拡大している。
イギリスは接種対象を16歳以上としているが、それには理由がある。医師でジャーナリストの村中璃子氏が言う。
「ある論文がきっかけで、イギリスのワクチン諮問委員会はワクチン接種の対象を12歳以上にまで拡大しませんでした」