宮澤医師はこうした日米の差を見て、果たして日本の子どもたちにもワクチン接種が妥当なのか疑問を感じたという。先の総選挙の前に、各政党に対して「欧米とは異なったリスク・ベネフィットの議論が必要ではないか」と問いかける質問状を送付し、各党の回答をYouTubeで公開している。
「ワクチン接種は、あくまでも希望者がリスクとベネフィットを比較衡量して判断されるべきもの」(立憲民主党)、「議論を抜きに接種を進めることは適切ではない」(日本共産党)といった回答が並んでいるが、自民党はコロナ対策に関する政権公約を返送して回答に代えており、宮澤医師の質問項目には具体的な回答をしていない。
「質問への回答そのものより、各党のコロナ対策の責任者に少しでも認識してもらえるきっかけになればと思って質問状を送りました。選挙運動で忙しいなかで対応していただいた各政党には感謝しています。
『家族にうつさないため』といった利他的な理由でも、子どもがワクチン接種する理由にはなりえます。ただ、日本には、リスクを伝えず、『安全だから打て』『つべこべ言わず打て』という医師や専門家が多く、インフォームドコンセントがないがしろにされている感がある。自民党は政権与党ですから、この問題を真摯にとらえてほしいですね」(宮澤医師)
子どものワクチン接種はリスクとベネフィットを比較して判断すべきと言われるが、そもそも、どんなリスクとベネフィットがあるのかを国民の多くが知らないままだ。前出・村中氏はこう指摘する。
「むしろ問題は、欧米では『子どもにワクチンを接種すべきか』が社会的な議論になり、そのうえで政策を決めているのに対し、日本の厚労省は『情報提供をしている』とは言え、リスクもベネフィットもはっきりと提示しないまま、『自分で調べて自分で決めてくださいね』と国民に判断を丸投げしていることだと思います」
今、必要なのは国民への丁寧な説明と議論である。
◆取材・文/清水典之(フリーライター)