《ワクチン非接種者の受験会場はこちら》。案内に従って足を踏み入れると、二重マスクにゴーグル、ビニール手袋という“完全武装”の受験者たちがズラリ。疑心暗鬼に包まれた教室でコホンコホンと軽い咳をもらすと、静まり返った教室にピリッと緊張が走る。
一方、非接種者と隔離された教室では、「パスポート」を持つ受験生が、ノーマスクでゆったりと試験開始を待つ──。
来年の受験シーズンには、そんな光景が見られるかもしれない。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが言う。
「受験のハイシーズンである来年1、2月に新型コロナウイルスの第6波が重なる可能性は充分ある。そうなったら、受験をスムーズに進めるため、受験者用のワクチンパスポートが導入されることもあるでしょう」
世界各地で新型コロナの「再流行」が始まった。10月最終週、欧州53か国では約180万人が新規感染し、約2万4000人の死者が出た。ともに世界の半数を占め、世界保健機関(WHO)は欧州が感染の「震源地」になると警鐘を鳴らす。
イギリスは10月下旬に1日の感染者が5万人を突破し、ロシアは首都モスクワをロックダウン。ドイツは11月に入って感染者が過去最多を更新し、東欧やバルト諸国なども感染が拡大した。迫る危機にWHO欧州地域事務局長はこんな声明を発表した。
「現在の傾向が続いた場合、来年2月までに欧州と中央アジアでさらに50万人の死者が出る可能性がある」
気になるのはアジア諸国の動向だ。日本同様、感染者が減少しつつあった韓国は10月下旬から再び増加し始め、1週間の平均感染者数が2000人を超えるほどに上昇。コロナ対策の優等生とされたシンガポールでも感染者が増えている。
「感染再流行は複合的な要因が考えられます」と言うのは一石さんだ。
「ワクチンの接種が進んでいない地域がある一方、接種後に一定の期間が経過して抗体量が落ちた地域もあると考えられます。また、ウィズコロナで規制を緩和して人流と密集密接が増えたこと、デルタプラスなどの変異株が発生していること、ウイルスが活性化する寒くて乾燥する季節に入ったことなども影響しているでしょう」(一石さん)
血液内科医の中村幸嗣さんは「再流行はワクチン接種の遅さが主因」と指摘する。
「ワクチン接種後に感染予防効果が続くのは6か月です。その期間に国民の7割ほどが接種を終えれば、集団免疫の理論で感染拡大が止まるはずですが、諸外国では接種スピードが遅くて抗体を持つ人間が閾値を超えず、感染がダラダラ続いているとみています。日本は第5波の感染拡大とワクチン接種が同時期に一気に進んだので、抗体を持つ人間が急増し、感染拡大が止まったのではないか」
現在はすっかり感染者数が底を打っている日本。だが、油断できる状況ではまったくない。
注目すべきは感染爆発の「サイクル」だ。世界の感染者グラフを見ると、最近では多くの国で昨年12月と今年7月あたりにピークがきている。