スポーツ

蛯名正義氏49才の決断 退路を断って挑んだ調教師試験の大変さ

2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏

2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏

 1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝。2001年に全国リーディングを獲得するなど通算2541勝、海外・地方を合わせて2598勝の歴代4位。フジヤマケンザンで日本馬初の海外重賞勝利、エルコンドルパサーのフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビジョー厩舎』から、今回は3度目の正直で合格できた調教師試験の厳しさについてお届けする。

 * * *
 ジョッキーをやめて調教師になるということはあまり考えていなかったんです。やはりカッコいいし、自分が一番やりたかった仕事です。「何歳になったらやめよう」などと思っていたら、できない仕事です。

 同期の武豊騎手だけではなく、年上の柴田善臣さんや横山典弘さんも頑張っています。幸い大きなケガもなかったし、僕の場合は体質的に減量で苦しむということもなかった。

 45歳の時にも年間100勝できたし、リーディングでも上位にいました。47歳になった年もディーマジェスティで皐月賞、マリアライトで宝塚記念とGIを2つも勝たせてもらったし、3歳クラシックすべてで騎乗依頼をいただいていました。年間で700回以上乗っていたけれど、まだまだエネルギーも残っていたので、ジョッキーのままで終わろうかと思っていました。

 ずっとお世話になっていた馬主さんから、やってみたらどうだと背中を押されたのがきっかけです。やはり70歳まで乗ることはできないわけで、でも好きな競馬には関わっていたい。それで、自分がせっかくこんな経験をさせていただいたのだから、それをずっと活かせる場所というと調教師しかないなと。

 もしやるのならジョッキーとしてギリギリまでやってボロボロになってから目指すというのは、調教師という仕事に対して失礼だし、調教師になるのが遅くなると、定年(70歳)までが短くなってしまうので、軌道に乗ったところでやめなければいけない。ならば早いうちに切り替えなければと一念発起。49歳の時から騎乗数を減らして、調教師試験の勉強を始めることにしました。

 ところがこの「勉強」ってやつが、思っていた以上に大変でした(笑)。

 昔は1000勝したジョッキーが調教師になろうとすると1次の筆記試験が免除されて、2次の口頭試問(これはこれでとても難関です)だけでよかった。いまは2000以上勝っていても、まったく優遇措置がない。

関連記事

トピックス

約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
チェーン店ではない昔ながらのレトロな喫茶店は日本の若者だけでなくインバウンド客からも人気を集めている(写真提供/イメージマート)
インバウンド客が行列をつくる「レトロな喫茶店」 マスターが悩まされる支払いトラブル「ドルしかない」客に「コンビニでおろしてきて」と伝えても「十中八九、戻ってこない」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
事件は、琵琶湖からほど近い滋賀県長浜市の閑静な住宅街で起きた(時事通信フォト)
「死んじゃうんじゃないの、なんて冗談を…」裁判所事務官の“黄色い家”の冷凍庫から女性遺体 証言で浮かび上がった“奇妙な家族関係”《事件の端緒はある夫婦の遺書》
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
会見中、涙を拭う尼僧の叡敦(えいちょう)氏
【天台宗僧侶の性加害告発】フジテレビと同じ構造の問題ながら解決へ前進しない理由とは 被害女性への聞き取りも第三者の検証もなく、加害住職の「僧籍剥奪せず」を判断
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
生活を“ふつう”に送りたいだけなのに(写真/イメージマート)
【パニックで頬を何度も殴り…】発達障害の女子高生に「生徒や教員の安心が確保できない」と自主退学を勧告、《合理的配慮》の限界とは
NEWSポストセブン
5人での再始動にファンからは歓喜の声が上がった
《RIP SLYMEが5人で再始動》“雪解け”匂わすツーショット写真と、ファンを熱狂させた“フライング投稿”「ボタンのかけ違いがあった事に気付かされました」
NEWSポストセブン