魚の油でうつ病が治療できる――いま、意外な“新薬”の可能性が注目を浴びている。食品の効能に詳しい肥満外来専門医の左藤桂子さんが解説する。
「2021年9月に熊本大学が発表した研究によれば、青魚に多く含まれる良質な油分である『オメガ3系脂肪酸』にはうつ病治療に効果的な成分があることが発見されました」
同発表によれば、オメガ3系脂肪酸を治療や薬に生かす研究も進んでいるという。医学界も注目する魚介類の健康効果だが、食と健康の専門家たちが推奨するのは“旬のもの”を食べることだ。秋葉原駅クリニック医師の佐々木欧さんが言う。
「一般的に“旬”とは、産卵期に備えて栄養や脂質を蓄えた、脂がのった時期をいいます。この時期の魚にはEPAやDHAといった良質な油をはじめとした栄養成分が豊富。動脈硬化や肥満、アレルギー予防などさまざまな健康効果が見込めます」
つまり、旬の魚介類を食卓に取り入れることが何よりも健康長寿への近道になるということ。秋も深まり、冬の到来を待ついま、食べるべき魚は何なのか。30人の専門家たちに、選んでもらい、ランキング化した。
以下、30人の「食と健康の専門家」に「いま食べるべき魚とその理由」を挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計。5点以上を獲得した食品をランキング化した。
秋津壽男さん(医師)、麻生れいみさん(管理栄養士)、石原新菜さん(医師)、磯村優貴恵さん(管理栄養士)、小倉朋子さん(トータルフード代表)、金丸絵里加さん(管理栄養士)、金子あきこさん(管理栄養士)、工藤孝文さん(医師)、黒田愛美さん(医師/アスリート)、済陽高穂さん(医師)、佐々木欧さん(医師)、左藤桂子さん(肥満外来医)、佐野こころさん(医学博士)、柴亜伊子さん(美容皮膚科医)、清水加奈子さん(管理栄養士)、白鳥早奈英さん(管理栄養士)、関口由紀さん(医師)、瀬戸拓さん(循環器内科医)、田中優子さん(医師)、中沢るみさん(管理栄養士)、浜本千恵さん(管理栄養士)、福田千晶さん(医学博士)、星子尚美さん(医師)、堀知佐子さん(管理栄養士)、松村圭子さん(婦人科医)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会)、森真理さん(東海大学健康学部准教授)、矢澤一良さん(早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構)、山本佳奈さん(内科医)、山崎利恵子さん(ベターホームのお料理教室講師/管理栄養士)
【1位】「鮭類」 64ポイント
「肌を若く保つビタミンAや骨粗しょう症予防効果のあるビタミンDなどビタミン類が豊富。そのうえたんぱく質の含有量が魚介類においてトップクラス。可食部の4分の1以上だといわれている」(小倉さん)
「赤い色素であるアスタキサンチンの抗酸化力はビタミンCの6000倍。老化や動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、がんなどあらゆる病気の予防効果が期待できる」(石原さん)
「栄養バランスがいい。DHAで脳機能、EPAで血行促進、アスタキサンチンが美肌やシミしわ予防、アンセリンが疲労回復と多機能な“万能食”」(矢澤さん)
「高たんぱく質なのに低カロリー。小麦粉や片栗粉をつけて焼くと、良質な油が流れ出にくいのでおすすめ」(佐野さん)
「アスタキサンチンには強い美肌効果が。シミや黒ずみの原因となるメラニンを抑制してくれる」(黒田さん)
「同様にビタミンDを豊富に含有するきのこと一緒に食べればさらにカルシウムの吸収がよくなる」(左藤さん)
【2位】「さんま」51ポイント
「さんまに代表される青魚はEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を多く含み、血液サラサラ食材の代表。血中のコレステロールを減らし、血栓ができるのを防ぐほか、脳卒中や狭心症、がんなどを予防する効果も期待できる」(済陽さん)
「皮膚の粘膜を守るビタミンAや、物忘れを防止し脳を活性化させるDHAを豊富に含有する」(田中さん)
「旬の時期こそ、鮮度のいい刺身にも挑戦してほしい。手間をかけたくない場合は缶詰の活用もおすすめ」(磯村さん)
「旬のさんまは内臓もおいしい。鉄分とビタミンB12が豊富で、貧血の女性には最高の食材」(中沢さん)
「栄養の代謝に欠かせないビタミンB群も豊富。疲労回復効果が見込める」(佐々木さん)「含有する栄養素の豊富さが魅力。ビタミン類や必須脂肪酸はもちろん、鉄やマグネシウム、ナイアシンやカリウムなどあらゆる成分が1匹に凝縮されている」(瀬戸さん)