総選挙で立憲民主党の江田憲司・代表代行と自民党の甘利明・前幹事長への落選運動を実践した元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が、違法にならない落選運動のやり方を指南する。
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「落選運動」は選挙の公示日前であれば通常の政治活動という位置づけで、「特定候補者を当選させてはならない」という運動を展開できます。もちろん嘘や誹謗中傷をしてはいけませんが、事実に基づいた批判、指摘は自由にできます。
ただ、選挙期間中になると、「落選運動」にも公選法の制限が掛かります。選挙期間中に政治活動ができるのは、政党と確認団体に限られます。だから落選運動も、個人での活動なら可能ですが、「組織」「団体」ではできないこととなっています。「虚偽事項の公表罪」(235条)もあり、嘘や事実の歪曲で相手を批判してはならない。
選挙運動では、ポスターやビラは規制されたものしか掲示、配布できませんが、落選運動の場合はその制限はありません。ウェブサイトやメールには、落選運動者の名前やメールアドレスの表示義務が定められていますが、その時期や方法についての制限は規定されていません。
今回、私の落選運動ではまず私自身のブログやツイッターで政策や政治家としての姿勢などから問題視している江田氏、甘利氏をなぜ落選させねばならないかを訴えました。私が運営するユーチューブ『日本の権力を斬る!』でも『〇〇氏落選運動スペシャル』という番組枠を立てました。
さらに選挙期間中には夕刊紙風の目立つデザインのチラシを作製し、当選させてはならないことを訴えました。チラシにも『発行人 郷原信郎』と明記し、メールアドレスと事務所のHPアドレス、ブログのアドレスを掲載します。私自身で便利屋に発注し、ポスティングもしました。
投票日前日には、郷原個人によるものとして、街頭演説も行ないました。駅前で『〇〇氏を当選させてはならない』というノボリを立て、台の上に立ち、『〇〇氏 落選運動』と書いたタスキを掛けて、足元にはビラを置きました。演説の際に心掛けたのは、対抗馬の名前を出すと、その候補を応援する形になり「選挙運動」と解釈されかねないので、対抗馬の名前は出さないようにしたことです。
結果は、甘利氏は自民党幹事長としては初となる小選挙区落選で、比例復活したものの幹事長辞任となりました。圧勝が予測されていた江田氏は、自民党の対立候補との票差が前回の4万5000票から今回は約1万3000票という僅差になり、実質的には大幅な得票減。
落選運動の効果は相当あったと言えるでしょう。
※週刊ポスト2021年11月19・26日号