日本全国がコロナ禍で経済的打撃を受ける中で、名古屋圏がいち早くそれを脱しつつある。9月に発表された基準地価で、名古屋圏(愛知県全域と三重県北部を含む)が商業地1.0%増、住宅地0.3%増と、ともに2年ぶりに上昇に転じたのだ。
名古屋の活気は「夜の街」においても一味違う。その象徴的存在が「エンリケ」こと小川えり氏だ。かつて2006年から2019年まで名古屋・栄のキャバクラ「アールズカフェ栄」に在籍し、最高月収5億円を稼いだこともある“日本一の元キャバ嬢”として知られる。
エンリケの活動当初、売り上げが高いキャバクラといえば東京・大阪で、名古屋は「日本一」とはほど遠かったと振り返る。
「名古屋の人って派手好きだけどドケチなんですよ。飲み代にお金をかける人は少なく、私が働き始めた頃はお客さんがシャンパンを下ろす文化もなかった。
それがある時、シャンパンを直瓶(ちょくびん、瓶を口にあてラッパ飲みする行為)している写真をブログにアップしたら、その姿を見たいと名古屋中からお客さんが集まり始めたんです。
でも、直瓶し続けていたら身がもたないから、10万円、100万円と値上げしたのですが、最終的には1000万円にしてもオーダーが入っていました。高級シャンパンの一気飲みが有名になって、名古屋にもシャンパン文化が浸透した。そう言って、今でもキャバクラ界隈の人から感謝されます(笑)」
エンリケの直瓶が有名となり、全国各地から客が訪れた。中には政治家や有名IT社長もいたという。
以降、キャバクラ界の名古屋嬢人気も増したというが、その最大の魅力についてエンリケはこう語る。
「私が思う名古屋のキャバ嬢の売りは“大阪とは違う笑かしの要素”です。ド派手な髪型にしてドレスを着ているのは、着飾ることが目的じゃなくて、お客さんとのコミュニケーションのため。あえて“ツッコミ待ち”をしてるかのような派手さで、お店というハレの場を演出する。そうやって『名古屋は東京にも大阪にも負けとらんぞ』って気概を示しているような気がします。
もちろん容姿だけド派手を狙うんじゃなく、私は“気配りの鬼”と言われるくらい周囲に目を見張らせてました。お客さんの会計待ちがないように、嬢だからって席についてるだけでなく、ササッと伝票を持って会計を済ませちゃう、とか。お金の話ばかりになっちゃいましたが(笑)、結局はお金よりも信頼を大事にすることが、名古屋キャバ嬢時代に得た大きな学びです」
※週刊ポスト2021年11月19・26日号