朝起きたらのどがイガイガ、保湿クリームを塗っても肌がカピカピ、そんな乾燥のシーズンがやってきた。乾いた空気中ではウイルスも活性化するなど、さまざまなリスクをはらむ。冬場は暖房をつけながら、加湿との両立が重要だ。
秋が深まるとともに気温も下がり、早くもクリスマスムードの街にはからっ風が吹きつける。
日本中を震撼させた新型コロナウイルスの感染者は激減したが、年明けにも「第6波」が到来するといわれている。さらにその時期はインフルエンザの流行も気になるところだ。
なぜ冬になるとウイルス感染症のリスクが増すのか。そのカギは「乾燥」にある。
国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。
「気温が下がる冬場は湿度も低くなって乾燥します。新型コロナやインフルエンザの感染をもたらす『ウイルス』は基本的に、低温になると生存期間が長くなります。また、ウイルスを含んだ飛沫は、湿度が下がって空気が乾燥すると水分を失い、小さくて軽い粒子になるため、ウイルスが飛散する距離が延びるとともに空気中を漂う時間も増大して、結果的に感染リスクが増します」
医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが続ける。
「これまで新型コロナは飛沫感染がメインとされましたが、最近の研究では、さらに粒子が小さいエアロゾル(浮遊する微粒子)が空中を数時間も漂い、それによって空気感染する可能性が指摘されます。冬になって空気が乾燥すると、エアロゾルの水分が蒸発してこれまでよりも舞いやすくなり、空気感染する確率がさらに高くなると考えられます」
特に厄介なのが自宅やオフィス内の乾燥だ。暖房は使う器具によって室内を乾燥させるものと、乾燥させないものがある。
石油ストーブやガスファンヒーターは暖かい空気と同時に水蒸気も排出している。そのため空気が暖かくなっても空気中に新しい水分を補充しているので、乾燥しないという仕組みだ。
「部屋を暖めるエアコンは空気を乾燥させます。なぜなら、空気が暖められれば空気中の水分が増えずに温度だけが上がるため、飽和できる水分の上限だけが上がり、湿度が必然的に下がります。
床暖房も同じ考えで、エアコンまではいきませんが、使えば湿度は下がります。
感染リスクを下げるために窓を開けて換気しても、室温が下がったら風邪をひくし、再び室温を上げようとエアコンを強めたら、また乾燥する。そうしたいたちごっこが起きる可能性が高いです」(一石さん)
冬場は換気と暖房の両立が難しいが、室内が乾燥すると、新型コロナやインフルエンザ以外のリスクも増加する。
「人体の表面は皮膚と粘膜で守られています。ところが冬は目、鼻、のどなど本来は粘膜で守られている部位が乾燥して、傷つきやすくなる。すると“バリア機能”を失った粘膜から細菌やウイルスが侵入して、鼻やのどなどの器官に炎症を起こしたり、ドライアイや風邪を発症しやすくなります」(上さん)