1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝を初め、国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビジョー厩舎』から、今回は調教師試験を目指して仲間と開いた勉強会の思い出についてお届けする。
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1年目の調教師試験に1次で落ちた時、こりゃあなんとかしないといけないと思いました。
それで、僕と同じように調教師試験を受けようとしている、西田雄一郎騎手、村田一誠騎手に声をかけて、勉強会をすることにしたんです。
調教師を目指している元ジョッキーの調教助手も含めて8人ほどでジョッキールームや調整ルームを借りて、厩舎作業が終わった夕方5時から9時ぐらいまで集まることにしました。終わってからの飲み会はありません(笑)。
誰かが指導するというのではなく、みんなで「これ分からないんだけど」っていう疑問を集め合って、分かる人がこれはこうだと教え合う。
一人でやるというのはどうしても大変。今日はこれくらいでいいかなって、折れちゃいそうになるけれど、仲間がやっているなら、僕もやるしかないなという気になる。自分が相手に教えられれば、また覚えられるし、相乗効果で頑張ることができた。もちろんみんな一緒に合格すればいいけれど、そうじゃなくても合格した人がその経験を残っているみんなに伝えてくれればいいと思っていました。
筆記試験はパワハラやセクハラといった新しい知識も必要になってきますが、とにかく覚えるしかない。過去の問題だけではなく、新しい問題についても話し合いました。
2次の面談試験では調教師になって馬主さんと話をする時、たとえば馬主さんにこういう質問をされた時にどう説明するのかといったことを訊かれます。こちらが答えると、さらに反論するようにたたみかけられる。藤沢和雄先生からは、専門的な言い方で説明するのではなく、分かりやすく説明するようにと教えられました。
厩舎経営というのは個人商店主みたいなものなので、いろいろなことが起こる。それにどう対応するかという、勉強よりも人間性を見るようなところがあるかもしれません。