秋のマイル王決定戦は「本命馬の引退レース」をどう見るかによって解釈が分かれそうだ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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グランアレグリアとシュネルマイスターの一騎打ちというのがもっぱらの前評判。そこでまずは2頭の「死角」をあら探し。そのうえで割って入る馬を考えてみる。
グランアレグリアは、天皇賞(秋)3着後、香港マイルも候補にあがったが「出走に際しての歩様のチェックが非常に厳しく」(サンデーサラブレッドクラブHPより)ということから、こちらに出走を決めたという。ここが引退レースになる。
出走するからには万全の態勢なのだろうが、今年は2000mの天皇賞(秋)を大目標に調教を重ねてきた。天皇賞では牡馬2000mのGⅠ馬相手に、勝ち馬からコンマ2秒差の1分58秒1で駆け抜けるまでに適応している。GⅠ4勝をあげている得意な距離であることは間違いないが、マイルに戻って馬に戸惑いはないのか。東京2000mの激戦から中2週の輸送競馬というのはどうなのか。
NHKマイルカップの覇者シュネルマイスターは秋初戦の毎日王冠で、安田記念を勝ったダノンキングリーを競り落とした。春は弥生賞(ディープインパクト記念)で2着になったにもかかわらず、クラシックには目もくれなかった若きマイラーだ。
平成以降、3歳馬(旧4歳馬)でこのレースを勝ったのは1997年タイキシャトル、2000年アグネスデジタル、2017年ペルシアンナイト、2018年のステルヴィオの4頭。天皇賞(秋)を勝ったエフフォーリアが2002年以来の3歳馬勝利だったのに比べれば、まだハードルは低そうに見える。しかも3歳で勝ったこの4頭はいずれも初GⅠ勝利だ。タイキシャトルは4月のデビューだったものの、アグネスデジタルはNHKマイルカップ7着。ペルシアンナイトとステルヴィオはクラシックで健闘はしている。4頭とも夏場にさらに力をつけたのだろう。
一方、GⅠの勲章を掲げて出走した3歳馬は1頭も勝っていない。桜花賞馬キョウエイマーチが2着、ダンスインザムードは天皇賞(秋)2着からの中2週でやはり2着、桜花賞とNHKマイルカップの2冠馬ラインクラフトも3着。NHKマイルカップの勝ち馬は過去11頭がその秋のマイルCSに出走しているが、ラインクラフトのこの3着が最高だ。
過去10年で見ても3歳馬はGⅠ馬11頭を含む33頭が出走して2勝3着1回。勝っていたGⅠの内訳はNHKマイルカップ5頭、桜花賞4頭(うちレシステンシアは阪神JFも勝っている)、朝日杯FS1頭、安田記念1頭。
また秋になって古馬相手の重賞を勝ったのが8頭。このうちミッキーアイルがNHKマイルカップとスワンSを勝って1番人気に推されたが13着。サリオスが朝日杯FSと毎日王冠を勝って2番人気だったが5着など、1~3番人気に支持された5頭はいずれも馬券圏外に去っている。素質は十分だが期待に応えるメンタルがまだ備わっていなかったのだろうか。
では3歳での挑戦は無謀なのかといえばそんなことはない。過去10年に3歳でマイルCSに挑戦した33頭のうち14頭は、古馬になってから、GⅠ4勝を含む重賞24勝。つまりここでの戦いが確実に糧となっている。