【著者インタビュー】落合博さん/『新聞記者、本屋になる』/光文社新書/1034円
【本の内容】
毎日新聞論説委員だった落合さんが本屋開業を目指して準備し、そして開業して現在に至るまでを事細かに綴った。《僕が本屋を始めた理由より、僕が本屋を始めた方法を伝えることの方が意味があるのではないかと考えている。なぜではなく、どうやって。そのことをこの本には書きたい》。ウィットに富んだ文章も魅力的だ。「行間、余白をいかに作るか。書きすぎないことが大切だとライティングのレッスンでも伝えています。好きな人に『好きだ』と書かないで、読んだ後に『この人、私のこと好きなんだ』と思ってもらえるような文章がいい」。 髪は金髪。会社を辞めた翌日に生まれて初めて染めたという。「真っ赤にしたときは、『近所を歩くときは帽子をかぶって』と妻に言われました」。
65歳で放り出されるよりは早く自分で始めた方がいい
新聞記者だった落合博さんが、東京・浅草に近い、台東区寿に書店「Readin’ Writin’ BOOK STORE」を開いたのは2017年4月。退社したときはスポーツ担当の論説委員で、60歳の定年まであと2年、残していた。
本屋を始めるまで、始めてからの日々を具体的に記録した『新聞記者、本屋になる』の巻末に年表が載っていて、すべては「2014年、長男誕生」という項目から始まっている。
「いま小学校1年生、7歳ですけど、息子が生まれたというのは自分にとって大きかったです。60歳で定年になった後、嘱託で会社に残ったとして、どういう仕事をするかもわからないし、収入も大幅にダウンします。65歳で嘱託契約が終わるとき、息子はまだ9歳です。そこで放り出されるなら、もっと早く自分で何か始めた方がいいと思ったんです」(落合さん・以下同)
昔から書店をやりたいと思っていたわけではない。取材でも、なぜ本屋さんだったのかよく聞かれるが、相手も自分も納得する答えはないそうだ。
「いまさら、なんで本屋だったんだろうと考えても、何の得もないですしね……。それまでに自分で集めた本が結構あったので、古本屋でも始めるか、ぐらいの気持ちでした」
58歳で会社を辞め、開店すると決めてからの行動は早く、これぞと思う個人経営の書店を訪ねて話を聞いた。