〈コロナで受診控え影響か、がんの診断9.2%減少 死亡率の増加懸念〉。11月5日の朝日新聞1面トップで報じられた記事は、日本対がん協会、日本癌学会など4学会の共同調査の結果を伝えるものだった。
それによると、昨年のがん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸部がんの5つ)で、がんと診断された人は前年比1割近く減ったという。ただし、それは決して喜ばしいことではなく、コロナ禍による受診控えの影響で「見つかっていないがん」が増えただけだと考えられているのだ。
今回の調査を行なった日本対がん協会広報部が説明する。
「2020年に日本対がん協会グループ支部が実施した5つのがん検診の『受診者数』は前年比3割減でした。今回の調査で、2020年のがん診断件数が前年比9.2%減となったのは、受診者数が減ったことによるものと考えられています。特に早期がんと診断される人の減少が目立っており、将来的に進行した状態でがんが見つかる可能性があります」
対がん協会によれば、診断が遅れている“隠れがん患者”は、推計4万5000人に上るという。そうした人たちは今後、進行がんの患者として顕在化すると考えられているわけだ。
コロナ禍の「がん検診離れ」について医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。
「厚生労働省も昨年は、必要性の低い検診を控えるように病院に通達を出していました。コロナ患者を受け入れた病院の受診を忌避する傾向もあり、全体として検診数が減ったのだと思います。定期的ながん検診を受けないことで、発見が遅れている患者さんが多数存在する可能性は高い」
リスクとなるのは検診離れだけではない。
7月に『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社刊)を上梓したジャーナリストの金田信一郎氏(会員誌『Voice of Souls』代表)は、昨年3月にがんの診断を受けたが「本来ならもっと早く見つけられるはずだった」と考えている。
「胃の不調を感じて最初に受診した地元の胃腸クリニックでは、まともな診察もなく『逆流性食道炎』の薬が処方されて終わりました。結果として見逃していたわけで、後に東大病院や国立がんセンターで『ステージ3の食道がん』との診断を受けたのです。不調を感じて病院にかかっても、がんを見落とされている患者は多いのではないか」