藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖)が、豊島将之竜王に挑戦していた竜王戦は12、13日の第4局で決着。羽生善治九段の最年少四冠記録、22歳9か月を28年ぶりに更新(19歳3か月)する史上初の10代四冠が誕生した。
「2人の対局は昨年まで藤井さんが6連敗していて、豊島さんは“天敵”とも呼ばれていた。克服したと言い切るにはまだ早いですが、今年は藤井さんが圧倒しているのは間違いありません」(将棋ライター・松本博文氏)
そんな藤井・新竜王に立ちはだかるのはNHK杯などの一般棋戦で10度優勝を収めたベテラン・深浦康市九段(49)だ。
10月31日放送のNHK杯2回戦で深浦九段は一方的に攻め続け、95手で藤井四冠(当時は三冠)を下している。対局後、藤井四冠は机に突っ伏し、しばらくうなだれて動けなかった。今年5月の王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦でも深浦九段に敗れており、2人の公式戦での対戦成績は藤井四冠の1勝3敗。通算勝率8割超の藤井四冠が2番負け越している棋士は、深浦九段だけとなる。
「深浦九段は藤井さんだけでなく、4強と呼ばれてきた渡辺さん(明・名人)、豊島さん、永瀬さん(拓矢・王座)とトータルすると33勝29敗で勝ち越している。
とにかくガッツがあります。藤井さんが相手だと注目されるし、棋士の本能としても強い相手との対局ではより力が入る。技量のある棋士が気持ちで負けなければ、藤井さんを倒せることを証明しています」(同前)
考え抜かれた研究の成果でもあるという。
「NHK杯2回戦では藤井さんを相手に、ほとんど時間を使わず一方的に攻め続けました。事前に深い研究がなければ、ここまで早く指せません。
深浦さんは事前にAIで詳細に検討し、研究範囲まで藤井さんを誘導していったようです。途中までAIが示す最善の順でついていった藤井さんもさすがですが、その上で優位に立ち、勝ちきった深浦さんが見事でした」(同前)